ひっそりと天橋立

　昨年のとあるオダックス近畿のブルベのゴールで、スタッフさんが「(大阪府)茨木発のブルベをしようと思っているんですよー」というようなことを言っていて、「家から近いので絶対参加しますよ!」みたいな返事をした。なので、茨木発400km「近畿一周(西)」のエントリーが解禁になったら迷わず申し込んだ。
□出走まで
　さて、今年はできれば3月までにSRを取ろうと計画を立てた。そして気づけば、4週間で400・600・400kmと走ることになっていた。「ゴーイースト～追い風400～」は体調面で苦労したが、一方「600kmブルベでプチ冬キャンプ～広島4大海道・今治～」ではかなり快調。その後も特に疲労も感じていなかったが、胃の調子が万全でないのにブルベ腹で暴食して、翌々日早朝に2回嘔吐。そういえばその32時間ほど前に生ガキも食べていたっけな…。ホットレモンとプリン、ヨーグルトを胃の隙を伺いながら流し込み、若干のだるさと微熱がある状態で仕事をし、葛根湯を飲んでずっと寝ていたら翌日には軟らかい食事が摂れるまでに回復。さすが私の胃腸♪なんて思っていたが、流し込むカロリー自体は足りていたはずなのに3日で1kg体重が減ってしまった。それからしばらく1食分を1回で食べ切ることができず、体重は0.5kgほどしか戻らず、カーボローディングどころではなかった。
　前日は午後に半休が取れたが、あまり胃の調子は改善していなかった。この状態で走れるのだろうかと若干疑問だったが、寝て起きてみると意外にも胃も体もすきっとした感覚だった。これなら大丈夫、と予定通り家を出て、受付まで自走した。

　全く余談だが、受付の公園のトイレは電気が点かなかった。ヘルメットに取り付けていたライトの台座(ヘルメットマウントブラケット)にCATEYEのGVOLT70をはめて、ヘッドライト代わりにした。GVOLT70では暗いのではないかと想像していたけれど、一番弱くしていても十分だった。GVOLT70は照明が横に広く、特にトンネル内で白線が見やすくて走りやすくなったので最近メインで使っている。ヘッドライト代わりとしても合格点だと思う。しかし、肝心のトイレにはトイレットペーパーがなく、用を足すのは諦めざるを得なかった。「備えよ、有事に。」(訳: トイレットペーパー代わりの物は携帯しておけ)であった…。
□昔取った(通った)何とやら
　今回のコースのアップ・ダウンはこちらの通り。

茨木から府道46号線を北上して亀岡・南丹を通り、綾部・宮津、そしてコース紹介には出てこない天橋立を通り、舟屋で有名な伊根に至る。ロードバイクに入れ込むまでは、亀岡まで平日夜な夜なよくドライブしに行っていて、当時「この坂を自転車で行きたくないわ～」と思っていた。天橋立までは道は違えど自走したことがあり、向かい風に苦労した記憶はあるが何とかなるだろうと思った。帰路の朝来(あさご)の登りは、兵庫県を南下するにはどこか登らなければいけないので諦めた。終盤は都市部で、信号峠に阻まれることが容易に想像がついた。
　そういうわけで登りの苦手意識が強く、暑いかもしれないとSUNVOLTのウィンタースーツ、秋用の長指グローブでスタートすることにした。
これが大外れ！
亀岡までの登りは全くきつくなく、むしろ寒かった。途中で-1℃の表示を見た。サイコン上は-2℃だったが、あながち外れでもなかっただろう。秋用手袋では指が冷たくなり、特にほとんど動かさない左手の指は痛いほどだった。ウィンタースーツのほうは薄手にもかかわらず、意外と寒さは感じなかった。ちなみに足先はシューズカバーなしでも問題なし。体質なのか、5本指ソックスを使用しているからなのかは分からないが、雨でも真冬でも冷たいと感じたことはほとんどない。
　46号線はダンプがよく通るが、昼よりは格段に交通量が少なく危険を感じることなく進むことができた。また道中、時々野焼きの臭い…といっても不快感のない焚き火みたいな臭いに癒された。PC1まで30km程度、確か南丹で信号待ちで一緒になった人たちに引いてもらった。

　PC1からはすごい速さで抜かされる以外はほぼ1人だった。明らかにペースが違ったので、後発組の人だったのではないかと思う。日が昇れば寒さが和らぐと思いきや、明るくなってもあまり暖かくはならなかった。比較的走りやすい道ではあるが、ダンプがよく通るのでちょっと怖かった。アップダウンも少しあって、「天橋立まで33km」の表示を見たと思ったらPC2に到着。PCでトイレに行っている間に相当の人数に追いつかれ抜かされた。コースがいいのでみんな速い。
　ここから天橋立・伊根まではアップダウンと向かい風で、一人ではややきつかった。私の力では向かい風で何とか20km/hの出せる程度。そして、コース説明には載っていない名勝・天橋立(載っていたらもっと早く売り切れていたと思う)。

トイレに行ったり海を眺めたりちょっと休憩してから再出発。天橋立を越えてからは、海沿いで向かい風がきつかった。

PC3 道の駅舟屋の里伊根の手前は、予想予習していなかった激坂だった。
□行きはよいよい帰りは…
　伊根まではよい天気だった。ここからしばらく元来た道を戻る。行きの向かい風は帰路の追い風、しばらくは楽だった。が、豊岡市に入る前の登坂が8%くらいでも長くてきついと感じた。前半調子よかったからがんばり過ぎたかな、とここでふと思った。この頃になると天気は曇りで、登坂が終わると13℃の電光掲示板を見たが、肌寒く感じた。
　トイレに行きたかったがいい場所がなく、20kmほど我慢してPC4 出石(いずし)のコンビニに。時間は十分に余裕があり、胃の調子がよければそばを食べるのになぁと残念に思いながら次に向かった。

せめても出石の気分を味わいたくて写真を撮った。
　ここから緩い登りが続き、向かい風がきつくなった。また、左膝の裏が痛くなったのでフロントギアをインナーに下げざるを得ず、ケイデンスを上げられるわけではないので速度がガタっと落ちた。そういえば今日はがに股・外側荷重気味のペダリングになってしまっていたなと遅いながらに振り返って原因を考えていると、そうえいば最近雨ライド・ビンディングシューズのままでの輪行が多くて、インソールをそろそろ交換したほうがいいと考えていたことを思い出す。遅いわ！私が使っているインソールはSOLESTAR(ソールスター)のTOUR(ツアー)で、調子がよいと踏む感覚でなく歩くような感覚のペダリングが無意識にできて、今まで随分助けられてきた。ちなみに雨と歩き過ぎはインソールを傷めるのを早めるので避けなければいけない…。
　何とかいろいろ耐えてPC5 朝来のコンビニに到着。足を回復させようとイートインで座ってみたが、あまり痛みは改善しなかった。ちょっと考えて出した結論は、「気にしない♪」。登りの後は必ず下るから、と登りで速度が落ちていることは気にせず、下りまで耐えしのぐことにした。下りで足が休まると、一転してここから次のPCまでは調子がよかった。途中で雨に捕まったが、下りでも苦にならない程度だったのでそのままPC6へ。
　一旦やんでいた雨はちょうどPC6で本降りになり、レインウェア上下(モンベルバーサライトジャケット&スーパーストレッチサイクルレインパンツ)を着た。手袋も秋用グローブから防寒テムレスに交換した。全く水が浸みないわけではないけれど、不快感や冷えはマシなのと、薄いので後半のブレーキングが楽なのが利点だと思う。手袋はどの距離のブルベでも違う種類のものを1対持って行くようにしていて、4回に1回ほど役に立っている。
　残り75kmのPC7に到着した時点で、疲労が溜まっていると感じた。前半の調子とは真逆だった。ここからは全く速度が出ず、メーター上で20km/hを切ることが増えた。登坂がインナー・ローでもきつくなった。誰かに抜かされてもついていくことができず、一人で耐えた。まるで子泣きじじいがサドルバッグに乗っているようだ。…ここでなぜか突然、タイヤに空気を入れたのが2週間前が最後だったことを思い出す。パンク神が降臨しないことを祈った。
　終盤は信号峠。信号が多いとストップ&ゴーで膝を使ってしまうようで、右膝の膝蓋骨あたりが痛くなってきた。膝蓋腱炎である。インソールのへたりだけでなく、日頃の大腿周囲のストレッチ不足、全体的な寒さも影響していたのだと思う。左膝裏も痛み(ハムストリング腱炎?)も完全に消えたわけではなく、時々ペダリングが止まってしまって余計ペースが上がらない。信号峠でなかなか進まないのは、ある意味言い訳にもなった。
　途中でトイレ休憩して、最終PC 宝塚のコンビニに到着。ここからはほぼ地元で、キューシートがなくても道が分かる。それだけに、普段出せるスピードとの乖離に愕然としたし、あえて信号多いコースになっている気もした。とにかく車体が重い、子泣きじじいがいる。体の状態としては、背中が凝りのような痛みが少々、腕の動きが悪い程度で、不思議と体の不調とは実感しにくかった。胃腸が本調子とはいえなくてもこまめに補給はできていたので今回は補給不足というわけでもなさそうで、先日の胃腸炎で貯えが不足していて使い切ったのではないかと思われた。
　ゴールが近づくにつれて、家の風呂と布団にとにかく早く辿り着きたくなった。お布団の吸引力は偉大である。遅いなりに足は止まることなくゴール着。
＼疲労困憊／

　帰宅して入浴、仮眠を取って昼前に起きたときはまださすがに体が重かったが、翌日以降は膝の痛みが少し残るくらいで筋肉痛もなかった。これくらいのペースなら体のダメージは少ないのだなと実感した。