ブルベの暦の上では新年となる11月。昨年度達成できなかったブロンプトンでのSR獲得を目指して、まず早いうちに長い距離を走っておきたくて600kmにエントリーした。
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<目次>
□ 動機と勝算
□ 準備
□ 新年のご挨拶
□ 福井満喫
□ いざキャンプ場へ
□ 目指せ ひるがの高原
□ 残すは関ケ原
□ 所感
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□ 動機と勝算
ブロンプトンでのブルベはこのたびで3回目。200kmは完走、600kmはDNF。
ブロンプトンでブルベを走ろうと思った理由は、輪行が気軽にできるから。例えば、自走で駅まで行くところを雨天で急遽タクシーに変えてみたり、ちょっと安い駅から離れたホテルを選択して部屋へ気軽に持ち込んだり、選択肢がぐっと広がる。ブロンプトンでブルベを完走できるなら、全部そうしたいくらいだ。私のブロンプトンは今年3月に代替わりして、C line Exploreになった(S6L(6段変速)の後継)。今年話題になったT Lineを買い足すかどうか迷ったけれど、Urbanモデルで4速なのでブルベを走るのは私には難しいと思って見送っている。
ブルベは、100kmで累積標高1000m以下のコースであれば、休憩・睡眠時間に工夫の余地はあるが、終盤まで平地巡行20km/hをキープできればどんな自転車でも完走できると思う。速度は平坦も登り下りもロードバイクと比べて10%くらい落ちる(異論は認める)。登坂は10%くらいの勾配を足付きせず登れれば十分。という経験則から、トラブルなければ完走できると思った。
□ 準備
まずはプラニングから。米原から日本海に出て、白川郷を通って帰って来るルート。
300~360kmで泊まれそうな所を探してみると、320~330km付近に以前泊まったことのある雨晴(あまはらし)キャンプ場があったので、テント(ツェルト)泊仮眠にすることにした。これ以降は長い登りとなるが、時間制限のあるPCは下ってからしかなく、借金30分くらいは取り戻せるだろうと踏んで滞在時間を調整することにした。
ということで、ツェルト、ポール、マット、ついでにお湯を沸かしてカップラーメンを食べるためにガス缶とバーナー、シングルのチタンマグカップ、などを用意した。そしたらかなりの重量になったため、宿泊道具・着替え・買い置きのお気に入りの補給食をリュックサックに詰めて、ゆうパックスマホ割でキャンプ場近くのファミリーマートに送って、レジで受け取って背負って走れるようにした。
装備の話、バッグの話は長くなるので、後日別記事にまとめたいと思う。
その他、前回まではパンク一発退場に限りなく近かったが、今回はたまたま前輪がパンクしてタイヤとチューブを交換する機会があり、小さな経験を積んだ。このときブロンプトンに付属のポンプを使ってみたところ、硬くて全く入れることができなかったので、CO2ボンベを使った。が、凍って取り外ししにくかったので、ランドキャスト(LANDCAST)のいわゆる”例のポンプ”+延長チューブを使うことにした。以前は米式・仏式の変換に中のゴム栓みたいな物をひっくり返す一手間が必要だったが、現行品は米式にしたければ金口を緩めて引き出せばよいだけに改良されていたので、新たに買い足した。

(Amazon) (楽天市場)
□ 新年のご挨拶
前日晩はスタート地点からだいぶ離れた所に泊った。米原はホテルが少ないので争奪戦らしい。遠いけどウォームアップにちょどいいかもしれない、などと思いながら到着すると、もう1台ブロンプトンが停まっていたのでご挨拶。Twitter(X)でやり取りのある紫芋兄さんである。
BBCK発足?! pic.twitter.com/pmLBmltmPD
— 門川彩雷 (@ayalalmngl) November 2, 2023
BBCKというのはBrompton Brevet Community Kansaiの略で、BBC(ブロンプトンでブルベに出る人たちのコミュニティ)北海道ミーティングにちなんで紫芋兄さんが編み出した呼称。手前の緑が私の。ブロンプトンはお座りできるから、壁がなくてもすぐ一緒に撮影できるのがよいところ。
さてブリーフィング。始まりは「新年おめでとうございます!」の挨拶。11月最初の週末だったので、まさしく元旦みたいなものだった。このコースのブルベは定番で開催されており、過去の参加者のTweetを調べてみると、グルメを楽しんでいる人が多かった。案の定、主催さんより「完走率は9割以上です。これで完走できないのは根本的な何かが間違っています。」という旨の話があり、思わず苦笑。
車検が終わり、できるだけたくさんロードバイクの人たちがいるうちに後ろに付かせてもらおうと、紫芋兄さんに「お先に」と言って出発した。後から追いついて来られると予想していたが、これ以降会うことはなかった…。
□ 福井満喫
ややオーバーペースでロードの参加者について行っていたが、後ろからやって来た参加者に引かれて行ってしまわれ、40分くらいで1人旅となった。向かい風でなくて助かった。途中、ダブルパニアの爆速自転車を見た。
日が明けてくると、霧が漂っていて幻想的だった。

旧賤ヶ岳(しずがたけ)トンネル前では、霧に見舞われて視界不良となった。



滋賀と福井の県境を登り、

前の人がスマホを構えたのでつられて撮影した電車の写真。敦賀市の北陸本線(何か珍しいの?)。
また結構な坂をじんわりとゆっくり登る。後ろからゆっくりペースのロードバイクの参加者が幾人か来ては抜かされた。下りで追いついた2人組とお話する。このペースの方々には貯金を稼ぐ得意技があるもので、普段チャイルドトレーラーを引いているスタミナ族と、カレーの瞬間食いができる特殊早食い族の人であった。
予定通り、70kmちょっとのコンビニで休憩にした。結構ここで休んでいる参加者が多く、ほっとした。この日、せっかくブロンプトンで気軽に走るのだから服もラフにしたいとパッドなしのウェアで走っていたが、この辺りでお尻が痛くなったので念のため持参していたビブに履き替えることにした。ぼちぼち出発しようかなという頃に、なぜか爆速ダブルパニアの自転車が到着。どこで入れ替わったのかさっぱり分からない。頑丈な鍵をたすき掛けし、パニアにはほとんど物が入っていないとはいえ寝袋が入っているらしく、重そうである。思わず「修行ですか?」と聞いてしまった。後半の山越えの途中の赤かぶの里で、無人販売の朝市で赤かぶを買うらしい。
出発してしばらく進むと撮り鉄が数人いたので、何が来るのだろうと路肩に停まって撮影したのがこちら。

南越前町の北陸本線。さっきのと同じ電車っぽい(何か珍しいの??)。

レインボーパーク南条の歩道橋。

なんか紅葉しかかっている樹木がきれいだった。
しばらくすると何だか観光地に辿る着く。一乗谷、ブラタモリで見たあそこではないか。


一乗谷朝倉氏遺跡。今日は先を急がねばならない。車で来て観光したかったな。
こうして133km地点、PC1に走行計画より50分ほど早く到着。

結ステーション時計台。
この近くのコンビニで昼食にした。11月だったが暑い日で、外でご飯を食べるのは少ししんどかった。また、トイレが和式でここまで踏み踏みしてきた脚にはしんどかった。
気を取り直して一人旅を続ける。

勝山城。

福井と言えば恐竜。あまりに暑くて、ふらふらと引き寄せられて山の駅 よろっさで飲料休憩。が、うっかり熱い緑茶を買ってしまってすぐには飲めないorz


黄葉はきれいだった。
福井はブルベで来ても大抵通り過ぎるだけという感覚で、これほどゆっくりしたのは初めてかもしれない。
□ いざキャンプ場へ
福井県と石川県の県境が前半の山場だ。登り切り、県境を越えて石川県へ。さあ下るぞ。といってもブロンプトン特有の問題でスピードは抑え気味。小柄で脚が短いとアップライトな体勢になり後輪荷重が少なくなるため、下手するとブレーキ時に体が前に飛んで行ってしまう。サドルの後端に座りながら下る。途中、車体が左右にぶれる嫌な感触があった。どうやら、縦型の排水用の溝であるグルービング工法と相性が悪いようだった。もっとタイヤ幅が狭いロードバイクでは問題ないのになぜなのか…。少し道がガタガタ言うと、今度は内装変速が働かなくなった。振動でケーブルアンカーバレルが外れていた。40kmの下りのうち2回抜けて、勘弁してほしかった。これ以降、ガタガタ道になったらケーブルアンカーを確認する、という手間が加わった…。
200kmでコンビニ休憩。アップライトな姿勢なのでお尻に負担が掛かりやすく、およそ70kmごとにお尻休憩の計画を立てていた。

手取川(てどりがわ)。白い岩がきれいだと思って撮った。この辺り、白山市は全域が白山手取川ジオパークとして認定されている。
下り切ると日本海に出た。PC2まで40km、ぶっ通しで行くぞーと思っていたが、お腹が空いて途中のコンビニで予定より1時間早く夕飯にした。予定通りには行かないものである。260km地点、PC2 道の駅 のと千里浜(ちりはま)には予定の25分前に着いた。待機しているスタッフさんにチェックを受ける。

こんな写真しかない…。
PC2の直前で爆速ダブルパニアの参加者と再会した。ここで、Twitterの挙動からきんちゃんさんと判明。PBP前に欧州ツーリングし、PBPもパニア付きで完走し、富士山に自転車を背負って登ってしまうタフな御仁…どうりで爆速のはずだが、寄り道も結構されたようでちょっとお疲れのようだった。
30km先の七尾のコンビニまで、きんちゃんさんに追いついたり離れたりしながら進む。きんちゃんさんはここで翌日に向けて荷物を整えるとのことで、健闘を祈り先に出発した。

夜は景色が単調になりがちだが、月のきれいな秋らしい夜だった。
予定より少し早くキャンプ場の近くのコンビニに到着し、食料を買って、送っておいた荷物を受け取った。ビニール袋を剥いでリュックサックを取り出し、担いでもう少し走って雨晴キャンプ場に到着。連休のためものすごく混んでいて、もしキャンプ目的だったら外でくつろげるパーソナルスペースはなさそうだった。今回は仮眠目的なので、自転車を固定できる木の近くにささっとテントを張り、清拭と着替え、肌ケアに歯磨きをして寝た。いつもは寝る前に何か食べて次の日に備えることが多いが、うっかり先に歯磨きを済ませてしまい、寝る時間が惜しかったので何も食べずに寝た。

人が多くて寝付けないかと思われたが、テントで囲われていると安心感があるようで一瞬で寝落ちした。ただ、後で畳むのが面倒でエマージェンシーシートを使わずレインウェアだけで寝たので、寒くて何度か目が覚めた。
貯金ゼロになる時間に起きて、日焼け止めを塗り、撤収は時短のためテントの物を全部外に出してから仕舞った。雨でなくてよかった。本当はお湯を沸かしてカップラーメンを食べたかったのだが、少し時間が足りなさそうな気がして、食べずに借金30分で出発した。すぐ近くがフォトチェックの道の駅 雨晴である。

□ 目指せ ひるがの高原
これから岐阜に向けて登る。登る前に、コンビニで使わない荷物を自宅に返送。着払い伝票を準備していたが、荷物のサイズを確認されたり伝票に記入されたりで時間が掛かってしまった。宅急便のアプリを使ったほうが速かっただろうか。
えっちらおっちらひたすら登る。後ろからロードバイクの参加者が抜かしていく。ペースが圧倒的に違うので焦りはないが、私の性格上、ロードバイクのときは借金ゼロで出発することが多いので、たくさん借金して寝て出発できる人がうらやましく思った。眠かったので、本当はキャンプ場で食べるために家で準備した乾燥牛肉を噛んで、頭を刺激しながら進んだ。目は覚めるものの、糖質が足りないからかペースが落ちてきて、慌ててお菓子を食べる。勾配もきつい所はきつかった。

南砺市(なんとし)大崩島(おおくずしま)の吊り橋、大渡橋。


道の駅 たいら 五箇山和紙の里
隣のロードバイクの方も、200kmはブロンプトンで完走したことがあるとのこと。
温かい飲み物を飲んで先に進む。しばらくして、”赤かぶの里”という看板が出てきた。きんちゃんさんが言っていたのはここか、と思っていると、無人販売所からパニアからかぶの葉っぱが左右に豪快にはみ出した自転車が出てくるのが見えた。声を掛けようとペースを一瞬上げたが全く追いつかず、やはり爆速であった。車が右側の葉っぱを大きく避けて抜かしていった。かぶのご加護があるようだった。
道路の右側に見事な合掌造りがあり、思わず足を止めて道路を渡って見たのが菅沼合掌造り集落であった。

ユネスコ世界遺産になっているそうだ(参考)。
ロードバイクで来ていたら、脚を止めたくなくてせこせこ通り過ぎてしまいそうだった。
ヒルクライムの頂上、ひるがの高原まで休憩なしで行くつもりだったが、お尻の痛みで休憩が必要だったので、道の駅 飛騨白山で休憩。ハンガーノックになりかけたロードバイクの参加者と少しお話する。ロードバイクの速さはチートだと思っているが、皆しんどくないわけではないのだ。

御母衣湖(みぼろこ)は以前もブルベで通ったことがあり、好きな光景なので写真を撮ろうとしたが、なかなかうまく撮れる場所がなかった。そもそも、写真を撮りたかったのか、ちょっと脚を休めたかったのか振り返ってみると定かではない。
ひるがの高原のコンビニで、少し早い昼ごはんにした。名物のソフトクリームが気になってはいたが、それほど気温が高くもなくて食べる気にはなれなかった。疲労もそれなりにあったようで、昼食も押し込むように何とか食べた。コース自体は紛れもなく観光・グルメコースであったが…。
□ 残すは関ケ原
ここから約76km下り、PC4のコンビニを目指す。せっかくの下りだが、振動で内装のケーブルアンカーが外れないか時々確認しなければいけないのがうっとうしい。下りで楽になったので眠気が出やすいかと思いきや、お尻の痛みが相殺してくれた。伸びるはずの速度も相殺してくれた。お尻が痛いので立ち漕ぎを多用していたら、足の指先にしびれ痛さが出た。今までに経験したことのない感覚だったので、直感的にやばさを感じて、足を開放して座り込める場所に駆け込んで治まるのを待った。それが2回あったので、その後はお尻の痛みと相談しながら恐る恐る立ち漕ぎをしていた。
美濃市のうだつの上がる街並みを通り、

527km地点のPC4のコンビニに到着。痛チャリ仕様のディスクホイール車(前後でブレーキシステムが違う)、きんちゃんさんの赤かぶ自転車、私のブロンプトンが並び、ある意味ブルベらしい珍景であった。
貯金30分弱で出発し、残りの登りは関ケ原だけだなと思っていたが、信号峠にしばらく捕まることになる。関ヶ原の登り自体は、それほど問題にはならない勾配と長さだった。

関ケ原はいつも素通りである。古戦場に行くのはきっとまたいつか。
ゴールまで残り20kmだが、交通量が増え、信号が増え、なかなか米原に着かない。この現象を米原峠と呼びたい。残り3kmになって、「歩いても着く!」とようやく安堵した。

ゴール!
スタッフさんの他、この後の新年会の参加者でにぎやかにお出迎えしてもらった。せっかくなので最後まで待っていると、きんちゃんさんが到着。歌舞伎の屋号の掛け声かのように「過積載!」と言われていた。以前一緒に走ったことのある名刀ムラマサさんがグルメライドを堪能しきって到着。1つ前のPCまで紫芋兄さんとローテーションを回して何とか間に合った人から、兄さんのタイムアウトDNFを知る。本当の40時間ぎりぎりにゴールした人、などドラマがあった。
□ 所感
ひさしぶりのブロンプトンブルベで、600kmを完走できたのは大きい。ただ体への負担はかなり大きく、2日目に調子が落ちるという感覚はここ何年も経験していないものだった。前回以前は、登坂時にシッティングを多用していて肩回り・腕・腰の負担が大きかったが、今回はお尻が痛かったこともあって立ち漕ぎを多用していた。その分、脚と足に多大な負担が掛かってしまい、特に右足は第2-3趾がしびれ痛いというモートン病になってしまった。ブロンプトンSRを狙うためには、まず体を壊さないように工夫していかなければならないと思った。
これを書いている現在、もう1つの距離の認定を得ていて、年明けのチャレンジの予定もおおよそついてはいる。同志も意外と多いことが分かり、レポートは遅れ遅れになるが参考にしてもらえるようにしていきたい。

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