過去DNFした神戸発山岳ブルベ200 GF(グランフォンド) (過去記録: DNF@BRM321神戸200 GF)。それから3年の間にコースはGFからVT(バーリトゥード)になり、自分の上達のスピード以上にコースの進化がすさまじい。急勾配を含み距離あたり最も登りが多く、距離的にミスや遅れを取り戻しにくい200VT、船に乗る時間も考えないといけない300VTには手が届かなくなってしまった。なので再挑戦するなら、獲得(累積)標高2000m/100kmを超えず、自分の走りが一番安定している400VTだろうなというのは去年から何となく考えていた。
去年クランクセットを165mmから 売れ残っていた 155mmに交換したところ、速くはならないものの、登りのしんどさがかなり緩和された。同時期、自転車歴4~5年経過してようやく体ができてきたのか、あるいは家庭の事情で仕事が規則的になったからか、走行後も以前ほどは疲れなくなった。強度を上げ過ぎずマイペースで走れば眠気もある程度コントロールでき、30時間は持つことも分かった。400VTを走るなら、普段仮眠なし24時間以内で400kmを走るところ、27時間の制限時間ギリギリに耐えられる走りにしようと思った。
今年の400VTは氷ノ山(ひょうのせん)ストレートというグラベルを含む獲得標高7000m超のコース。実際に400VTにエントリーする勇気はなかなか出ず、今年4月に何とか時間を作って一部を試走することにした。もちろん、最も確認したかったのは「氷ノ山ストレート」。Googleマップのストリートビューではどの程度の荒れ具合かよく分からず、ネットで調べても自転車で行った人の情報が少なく、よく分からなかった(つまり、多分普通は自転車で行かない所なんだね)。本番のコースは初稿よりだいぶ変更となったが、その元のバージョンに従って、養父(やぶ)からハチ高原に55kmほど走って、そのグラベルを見に行くことにした。
結論から言うとグラベルは確認できなかったし、本番では通らない道もあったのだけど、この試走で得られることは多かった。平坦なところは風が強く、DHバーにキューシートを固定したいつもの方法では煽られたこと。荷物を減らしたつもりでもまだまだ重かったこと。途中で普段通り休憩したら目標のタイムをクリアできず、”食事”を摂る時間が自分の走力では確保できず、走りながら食べられるようにする必要があること。シーズンを過ぎたスキー場の自販機はだいたい機能していないこと。


グラベルの入口はこのときはまだ雪で要塞化していた。実際に道を見ることができていたらエントリーしたのだろうか…? 「見てみたい」という欲が残ったが、まだエントリーを迷っていた。
別の日、初稿のバージョンで最初(再度山)と最後(六甲山)をつなぎ合わせた80kmくらいのルートを走ってみた。

47kmしか走っていなくても、その後のハニー坂・六甲山はめちゃめちゃきつくて絶句した。ただ、写真を撮ったり休憩長めにしたり、仕事の電話を受けたり時間に余裕を持ったわりには目標タイムをクリアしていたので、エントリーすることを決めた。その後、冬季通行止めの延長により、本番のルートは獲得標高が当初より450mほど減って、DNFも若干しやすそうになっているように見えてちょっと希望が持てた。
準備期間は1ヶ月くらい。風邪をひいた後の体調を戻すために文明の利器を使ったり(前回記事: 周波治療器 AT-mini Personal (ATミニパーソナル)の思わぬ効果)、筋力を戻すために筋トレをしたり、ローラー練で心拍を上げることに慣れたり。また、もともとカフェインの摂取が多くて飲まないとボーっとしてしまうくらいなので、ブルベ中のカフェインの効果を高めるために摂取を減らすようにした。体重は気にし過ぎないようにしたら、気にしなさ過ぎて1kgくらい増えてしまったorz コーヒーとおやつを仕事から帰る前に食べることが多かったのをカフェイン断ちとともに止めたら、夕飯を減らせなくなり、夕飯後に強烈に眠くなってわりとすぐに寝てしまうようになったからではないかと思う。体に関することはもっと長期的に取り組まないといけないなと改めて思った。
一方、アイテムや荷物の見直しはもう少し前から取り組んでおり、いろいろなことをした。
・メインスマホの機種変更、サブスマホのバッテリー交換
充電が24時間もたなくなっていたため。道中充電のことを考えるのは最低限にしたい。
・インソールの変更、クリート位置の変更
試走で右足首が痛くなったので調整し、インソールはいい感じだった。が、クリート位置は実走の機会が少なくて調整しきれず、結局本番も同じところが痛くなった。
・フロントバッグの導入
走行しながら補給食を食べやすくするため。これが一番重要だったかも。
・ライト・サイコン・キューシートの位置変更
フロントバッグを導入したら、これ全部やり直し…。もう2年以上変更せずに済んでいたのに。
・トップチューブバッグ・サドルバッグ・輪行袋の小型化・軽量化
荷物が入るバッグを選ぶという状態から、バッグに入るように荷物を選ぶという初めての経験。装備を見直すいい機会にはなった。でも、軽量化された以上に、フロントバッグ導入・持参する補給食の増量、CO2ボンベ持参などで相殺されてしまった。
・調整
直前のタイヤ交換、トルク確認などはショップにお任せ。
列挙してみるとトレーニングよりアイテム課金のほうが重い気がする。
前夜はスタート近くに泊まり、当日は輪行解除して着替えなどをゴール最寄り駅のコインロッカーに突っ込んで受付へ。雨は降らないと思っていたのに、小雨が降っててワロタ。エントリー人数自体も少なかったが、出走は4人だけ。1人旅になるのは確実なので、いつも以上に安全に帰らないとと思った。いつもは写真をTwitterにアップしたり、家族に進捗をメッセージで送りながら走ることが多いが、山だと電波も微妙だし、時間の余裕もないだろうし位置共有アプリを使うことにした。動けなくなるトラブルが起きたら参考にしてくれるだろう。
スタートして最初の登りは再度山。登るのは4回目。ボトルの水を1本分にしてまで軽量化対策したのに、車体が重い気がする。実際多分試走のときより重いし、何よりもエンジンたる人間も重くなっている。右足首の角度が悪いのか、初っ端から足首が痛くなってしまった。過去だいたいスタートから50分で着くのに数分オーバー。「今日は調子がよくはないな」と覚悟を決める。

シューズのダイヤルを少し緩めて、ペダリングの角度も少し変えて下って足を休めているうちに、右足首の痛みはあまり気にならなくなり、幸い最後まで再発しなかった。天気は曇りで電光掲示板で見る気温は22℃くらいで、快適に平坦路を飛ばした。

姫路城も一応眺めた。
60km地点のコンビニで小休止し飲料を補充し、108kmのコンビニPCに向かう。貯金は順調に稼げ、最大でグロス20km/hに達したときもあった。これほど稼げるなら絶対完走したいと思った。

PC1のローソンに着いたときはちょうどお昼時だった。貯金があったのでおにぎりとプリンはその場で食べ、ちょうどフロントバッグに入れやすそうなミニチョコクリームパン5個入りを走行しながら食すことにした。ちょうど1個約100kcalで計算もしやすい。今回はコントロールがローソンばかりだったので、後で同じ物を迷わず選ぶことができた。
これ以降も加保坂(かぼさか)まではさほど登りにならず、天候も曇りのままで快適だった。次のコントロールは151km地点のミズバショウ公園だ。試走のときはまずまず登れたのでこなせるかと思いきや、145km走ってきてから登るのは、試走のときのハニー坂・六甲山並みにとてもしんどかった。心が折れそうになるところ、「VTを走ろうと思えるようになっただけでもスゴイ!」「足付きしないなんてスゴイ!」と低次元で自分を励まし続けた。

ここから少し下って林道へ。試走のときより枝や石がきれいになっていて走りやすかった。せっかくなので立ち漕ぎで少し速度を稼ごうとしたところ、左太もも裏と右太もも表が攣りかけた。塩分含めて補給に失敗した感触はなかったが、もともと暑さに弱い上に今年はまだ暑熱順化できていないので、水分不足気味だったのだろうと思う。

これは試走のときの写真。よい景色。
林道を抜けてしばらくしたところの自販機で飲料を補充。ここから鉢伏高原までの登りは試走のときからしんどかったので覚悟し、少しジグザグ走行することにした。少し目の前だけをぼんやり見て周りは極力見ず(というと語弊があるので、正確には景色として認識はせず)、進んでいないことを意識しないようにした。それで思っていたより楽に乗り越えられた。

ここの自販機で飲料を補充する予定だったが、普通の水やスポーツドリンクがない。試走のときは買えたのに。ただ今回は気温が下がってきていて補充しなくても大丈夫そうだったので、抹茶オレだけ飲んで他の自販機を見に行くこともせずに次のグラベルに向かった。
氷ノ山ストレートは大きめの小石が浮いている本当のグラベルだった。機材の都合上、23Cのグラベルキングで突入することになった。受付で23Cでの走行は厳しいという話を主催のKさんから聞いていたが、本当にその通りだった。

景色はきれい。そして伝わりにくい小石の粗さ。
登りは轍を進めば登れたが、その轍もすぐなくなってしまう。草の上なら走れそうだったのでやってみたが、拳の半分くらいの大きい石が隠れていて、弾き飛んだときに”ガンッ”とホイールのどこかに当たった音がしたのでこれもやめた。スポーク折れたら対処できないし。下りも轍があれば下れたが、突如轍が消えて時々大穴みたいな凹が現れる。バランスを取ろうとすると、道の左から右へそしてまた左へとバイクがスキップする。なので、”ストレート”らしさは感じられなかった。目の錯覚で、登りに見えるのにどんどん加速されることもあった。足ブレーキで止まろうとしたところ、攣りかけていた太ももがついに攣ってしまった。幸い歩いているうちに回復し、また轍が見えて下りに挑戦し―以下同文―というのを繰り返した。スリルを楽しんでいたが、立ちごけレベルとはいえ2回転倒し、メカトラを起こしたら厄介だと冷静になって下りは基本押し歩きにした。

距離にして11kmくらいを1時間20分くらいだろうか。アドレナリンが出ていて空腹も感じなかった。
やっと舗装路に出たときには暗くなっていた。ここから小さな町に出て棚田に登る。少し飲料を補充したかったが、ごみ箱のない自販機が多くて結局我慢した。途中トイレに寄りたかったが、暗くてヘッドライトがいるほどで、我慢できなくはなかったので我慢した。予定通りにはいかないものだ。棚田の手前での山肌には鹿の群れらしきものが見えた。棚田に近づくにつれてカエルの合唱が聞こえてきて癒された。

棚田見えないねぇ。
グラベルで貯金をかなり失ったはずだが、まだ1時間くらい残っていてありがたかった。小雨が降っていたが、止むと信じて210km地点のコンビニへ。下りは汗冷えで少し寒かったものの、雨に濡れて冷えることはなかった。遅かった分、天気は味方してくれたようだった。
胃は少し疲れていたが、まだ固形物を食べる元気があり、おにぎりを夕食にした。この後しばらくは平坦で、貯金を取り戻そうとして急いだ。225kmの通過チェックのコンビニではキットカットだけ購入、268kmのPC2のコンビニで各種補充をし直した。以降、多々良木ダム、黒川ダムまでちょっと登る。普段なら登れそうな気がしたが、ブリーフィングで激坂と言われていて足も攣りそうだったので躊躇なく1.5~2kmくらい押した。青垣峠からの下りは快適だった。しかしこの頃にはカーブで車体を十分倒せるだけの力がなくなっていて、この後は速度を落として下らざるをえなかった。気温は14~16℃程度でも下りは寒かった。かといって、ウィンドブレーカーを着ても登坂ですぐ暑くなるだろうと着ることはなかった。
最後のコンビニPCで十分補給し、最後70kmはもうコンビニには寄らないことにした。ローソンなのにここにはミニチョコパンがなかったのが残念だった。普段なら残り70kmならゴールが近いように感じられるが全くそんな気にならず、貯金があっても余裕は感じられなかった。ここからしばらくは平坦だったが、汗冷えのせいで眠気が出てきてあまり飛ばせなかった。ウィンドブレーカーを着るか悩んでいたが、時間が遅かった分、ほどなく日が出て寒さが和らいだので不要だった。

川下川ダム(かわしもがわ)。この黒く垂れた汚れが何とも言えない。
ここから西宮・有馬方面に少し登る。いつもならあまり気にならない勾配でも、ノロノロしてバランスが取りにくくなってしまっている。後半の平坦路で貯金を取り戻そうとして背中・腰の力を消耗したらしい。
船坂の交差点からゴールの六甲ケーブル上駅までは、試走のときのタイム+20分を見積もっても十分時間があり、完走できそうだった。まずはハニー坂…一番きつい場所は分かっているので、そこだけ押し歩いた。躊躇はしない。その後に来るラスボス六甲山は5km登り続けないといけない。ジグザグ走行で進んでいたが、後ろからの車とバイクの圧に耐えられなくてやはり押し歩きした。カーブでは道路の水勾配や減速帯で邪魔されて、ジグザグしようとしても難しかった。だいぶ体力が失われていた。
つらかった六甲山 一軒茶屋までの登りを終え、やっとゴールの 六甲ケーブル上駅。

貯金も残せた。
この後少し登ってから、表六甲を下ってゴール受付のマクドナルドへ。当日の完走率は50%だったそうな。
こうして、攻略方法としては邪道な気もするが、登坂が得意と言えないなりに、400VTを完走することができた。もっと日常的に登る機会を増やさないとと思うし、もっと登れるようになれば他の距離にも挑戦してみたいとも思う。ともかく、正式な認定が出れば今年もSR獲得なのでしばらくゆっくりもしたい。
[場所・兵庫]
完走@BRM521神戸400VT
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