氷点下サイクリングはお好き?

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 大げさなタイトルだが、先日走ったブルベを通じて率直な気持ちを表したらこうなった。雪国や山の住人のサイクリストには笑われそうだが、瀬戸内海・太平洋側の都市部でしか生活したことがない私にとっては氷点下は滅多に経験しないものだ。雪を見ない冬もあるし、1cmでも積もれば交通に支障が出るし、気温がマイナス予報だと駐車場が凍らないか心配で車で出掛けるか迷うレベルなのだ。
 それなのになぜ走ったのかというと、2022年度のブルベが今年11月から始まり、早く長距離の認定を取っておきたかったからだ。選んだのは本当は9月に開催される予定だった「きらり飛騨路」の副題を持つ600kmブルベ。

結構登るようだが、難易度は辛口(=普通の600km)とのことで、あまり深く考えずにエントリー。その後、Twitterで情報収集したところ、めっちゃ寒くなりそうだという話で持ち切りだった(Twitterって便利よね)。過去にSUNVOLTのウィンタースーツ(サンボルト ヤフー店)と秋用の長指グローブで-2℃を突破した経験があり、凍結はどうしようもないが、服装はもう少し対策すれば何とかなるだろうと考えた。
□準備
 天気予報は晴れ。雨だったら躊躇するところだったが、その点はよかった。その分、放射冷却で寒くなるんだろうなと思った。気温は-2~18℃と予想し、服装はミレー メッシュインナー長袖+SUNVOLTのウィンタースーツをベースに、寒くなったらレッグウォーマーとレインウェアを重ねることにした。手袋は普通のフルレングスのグローブを日中、夜間は防寒テムレスを使うことにした。もともと寒さに強いほうなので、日中の暑さも考慮してその他は軽装である。ヘルメットはKabutoのFLAIR、反射ベストは通気性抜群のタスキ型(オダックス近畿ではOK)、頭部はメリノウールのBuff 2枚をバラクラバとネックウォーマーに、ソックスは普段から使っている5本指ソックス(シューズカバー不要)。念のため、モンベルのレインウェア上下を防寒着としてApiduraの9Lのサドルバッグに詰め込んだ。
 600kmのときは普段350kmをめやすに宿泊しており、今回ちょうどそれくらいの距離によさげなホテルがあった。参加者の多数がそこにしたようだった。着替えを送っておくか悩んだ末、たどり着けなかったときの処理が手間に思えたので、ホテルで洗濯することにして、過ごす最低限の着替えと出発前に塗るクリーム類などはサドルバッグに入れて持って行くことにした。参加者が多くてホテルのコインランドリーがすぐに使えない可能性も考慮して、手洗いできるようスクラバのウォッシュバッグ(楽天AmazonYahoo)の普通サイズと小分けにした洗剤も持って行った。

↑こんなの。上下一体のウィンタースーツも、単品で他の物を入れなければ入ることを確認した。
それなりに荷物を厳選したので9Lのサドルバッグに入り切ったものの、かなりパンパンになった。
□寝不足スタート
 この週、仕事の持ち帰りで連日睡眠不足だった。前日夜、子どもを寝かせた後、夫の帰宅を待って出発。最寄り駅から輪行すること2時間20分でようやくホテルに到着。京都は近そうで遠い。電車の中は換気がしっかりなされていて、寒くてあまり眠れなかった。ホテルに着いた時間が遅く、眠れたのは日が変わってからだった。
 早朝に起きて、ホテルで輪行を解除して受付に自走。京都市内の自転車レーンは青ではなくえんじ色(赤茶色?)で、暗いとかなり見えにくい。あれ意味あるのだろうか?

スタート地点は平安神宮前の岡崎公園。暗くて写真がうまく撮れない。思いのほか出走者は多かった。
 睡眠不足が続くと、自転車通勤でさえ足に疲労が蓄積する。最初から右足の大腿四頭筋がやや痛く、膝を労わりながら注意して走った。最初は誰かについていけたが、車通りと信号の多い道を抜けると登りが始まり、ほどなくおいて行かれた。膝に負担を掛けないよう、追いかけようと無理しないように気を付けて登った(どうせ追いつけないのだけど…)。登りが苦手な私は、登りで抜かせると思った人は積極的に抜かして下りでつなげるが、今回は下りで抜き返された人が何人かいた。自分は登りと下りの落差が大きいと思っていたが、上には上がいるものだとちょっと驚いた。
 最初のPCは72km地点。ここまでの最低気温は-1℃だったが、登坂もあり寒さはあまり感じず、調子はまずまずだった。ここからはあまり登らないのでペースアップしたいところだったが、1人で漕いでいるとペースが上がらないと感じるようになった。なんか退屈で、1人しりとりをしたり歌ってみたりしたがあまり変わらず、多分少し眠気があったのだろうと思う。

気分転換に写真を撮っていたら後ろからちょっとゆっくりペースで2人来た。しばらく話しているうちに調子が復活したので、同行者の存在のありがたさを実感した。補給や登坂などでお別れし、しばらく1人で平坦路をずーっと進むが、やはり段々とペースが落ちてきて、128kmで予定していたPC間の中間のコンビニでコーヒー休憩を取った。これがこの日初めてのカフェイン摂取だったが、本当はもっと夕方まで延ばしたかった。普段はできるだけカフェインがよく効くようにブルベ前は摂取を減らしておくのだけど、睡眠不足のまま仕事をしていたのでそれができないどころか、普段より摂取量は増えていた。なので、カフェインを取っていないとデフォルトでボーっとしやすくなってしまうようだ。
 コーヒーを飲むと頭がすっきりして、180km地点のPC2のコンビニまでは順調だった。が、リスタート後はまたペースが落ちてしまう。

九頭竜湖駅のコンビニで予定外の休憩を取る。普段着の地元のサイクリストに声を掛けられたので、ブルベを布教しておいた。
□いざ山へ
 235km地点、PC3で遅めの夕食を摂る。すでにこの時点で寒いと感じ、レインウェア上とレッグウォーマーを重ね着し、手袋は防寒テムレスに交換した。今から思えば、レインウェアの下も履けばよかった。重ね着に掛かる時間は積み重なると馬鹿にならない。
 ここから長い登坂が続く。激坂はないもののしんどい。道が暗い。このブルベの副題に”きらり”とあるので月や星が見えないかと思ったが、やや曇っていたのか見えなかった。山にでもどこにでも自販機があるのが本州だが、この道はかなりの区間で自販機がなかったように感じた(地図で見るとそうでもない)。本来の開催時期の9月のままだったら、ちょっと私にはしんどかったかもしれない。この時期でも意外と水分を消費したので、反対車線側だが「道の駅 大日岳」で休憩した。ボトルの冷え切った飲料を無意識に一気飲みしてしまったので、これは後々胃腸が働かなくなるかも、と考えて暖かい飲み物を自販機で買って飲み足した。ボトルもいっぱいにして安心感をゲットした。
 登りは寒くなかったが、下りは言わずもがな。松ノ木峠の電光表示板は-4℃を示していた。めったに寒さを感じない足先も冷たいし、眼も涙が凍りかけるのか痛いし、指もしびれるくらいに冷たい。指を常に動かしていないと冷たくて凍りそうだった。下りで指が利かないと致命的なので、矛盾するようだがブレーキをほとんどかけずに両手の指を交互に動かし続け、足も寒いので足を無駄に回して下った。道がよかったので助かった。
 長い下りを経て290km地点で登り返しになったとき、特に変な感覚もないままに、フロントディレイラーが機能しなくなった。まさかのアウター縛り。まだまだ明日登らなきゃいけないのに、ここまで来たのに(泣)…とDNFが頭をよぎっていたが、5kmほど走ってトンネルの中に入ったら戻った。後日いきつけのショップの店員さんに聞いたところ、STIレバーのどこかのグリスが寒さで硬化して空振りするらしい。説明できていない気もするが、とにかく氷点下では普段とは違うことが起こるようだ。トンネルの中では寒さが和らいでいたので戻ったのだろう。
 もう日が変わる頃、PC4に到着。ここでようやくレインウェアの下を重ね着した。1つ前のPCで着ておくべきで、サドルバッグから何度も出し入れするので無駄な時間が多かった。次のフォトコントロールまでもうひと登り。

美女街道展望広場
どこに美女要素があったのだろうか。
□1000m超へ
 ホテルに着いたのは予想より30分早い2:00頃だった。貯金ゼロになる5時には出発することにしていたので、到底洗濯する時間がない。あわよくばもう30分早く着けるかもと思っていたが甘かった。ウォッシュバッグと洗剤を持ってきた意味がない。ビブのパッドだけは清潔にしたかったので、アルコールジェルを塗ってウェットティッシュでふき取った。補給、充電、シャワーを済ませて寝るも多分1時間半ほどしか眠れなかったが、起きたときに眠気や疲労感はなかった。日焼け止め、スポーツバルムのレッド3、皮膚保護剤のプロテクトJ1を塗りこんで着替える。この時期はスポーツバルム(楽天AmazonYahoo)のレッド、春・秋・雨のときはイエローを愛用しているが、これを使うようになってから走り始めで足が攣ることがほとんどなくなったので、泊まりのときは小分けにして持って行くようにしている。前半では着ていなかったが、インナーの上にファイントラックのメリノウールの長袖も着た。次のコンビニまで50km以上あるのでトイレ(大)のタイミングを心配していたが、出発前にきちんと出たので不安が減った。お腹がちゃんと動く余裕がある証拠でもあるので、”今日もいける!”と思った。
 ホテル最寄りのコンビニで補給後、いざ西ウレ峠へ。寝不足続きなので、無理するとその後で眠くなりそうだと考えて、6割くらいの力でずーっと走ろうと心掛けた。登る間は誰にも会わなかったけれど、登り序盤のバス停のような小屋で仮眠していた人を見たΣ(゜ロ゜;) 寒くないのか…? 激坂はなかったが、長い長い登りだった。

西ウレ峠の標高は1,113mらしい。自転車を置いたときに地面を見ると、草に霜が降りていて”きらり”としていた。副題はこれだったのか。
 下りはずっと下りというわけでもなく、物足りなかった。心配していた寒さも、せいぜい0℃くらいで対策済みなら問題なかった。松ノ木峠からの下り並みに長い下りならよかったのに。

紅葉を期待していたが、時期が遅かったのか茶色っぽい木が多くてほとんど見られなかった。
 西ウレ峠を過ぎて一番近いコンビニで防寒着のレインウェア一式とメリノウール長袖、防寒テムレスを脱いだが、レッグウォーマーだけは重ね着したままにした。これが後で失敗となる。
 さらに50kmほど先のPCに到着。ここで他の参加者の動向を聞くと、同じホテルに宿泊した人で、朝食を7時まで食べていた人もいたとのこと。別世界の話ですな…。また、MTBでの参加者とも少しお話しした。顔に出ている疲労度が我々ロードバイク走者よりも濃い。何がそのような修行に駆り立てるのか疑問に思ったが、自分のやっていることもブルベをしない人から見たら似たようなものかもしれない。この方、後で完走されたことと、MTBで走る人としてちょっと有名であることを知った。
□2週連続の琵琶湖
 ここからは交通量が多く、ストップアンドゴーで膝に負担が掛かった。グロスタイムも上がらない。少し連続して走れるようになっても、膝が痛くてスピードが出ない。この膝の痛みは最初の痛みとは違って、レッグウォーマーの重ね着で膝の皿を圧迫して起きたもの、膝蓋骨前滑膜炎だと思う。今回せっかく膝回りが楽なSUNVOLTのウィンタースーツを選んだのに、自分で台無しにしてしまった。気温も17℃くらいでちょっと暑くて、レッグウォーマーはすでに不要だった。
 関ヶ原をスルーし、彦根に入る前の高速道路の横道の今回最大の激坂を乗り越え、PCのコンビニに到着。膝の痛みの元凶のレッグウォーマーを脱いだ。今回サドルバッグをぎりぎりのサイズにしたので、荷物の出し入れが非常にやりにくく、時間ロスにつながった。大き過ぎても、きちんとまとめないと揺れやタイヤとの接触につながるので面倒なのだが、今回は小さすぎた。

ようやくコンビニ前でまとまった紅葉が見られた。写真ではあまりきれいには見えないのが残念。
 ここからは琵琶湖一周ルートの逆回り。1週間前に川西600で走った道と同じである。もう琵琶湖はしばらくいいかなと思っていたのに、また来たYo! 先週は眠気でイマイチな速度だったが、今回は幸い眠くならず+2~3km/hほどで走れた。膝の痛みもここでは気にならず、眠気の点でいえば寝不足なのに昨日より調子はよく、全く謎である。先週走ったのは午前中で、車の抜かし方が容赦なかったが、今回は夕方でなぜか気配りが感じられた。特に暗くなって尾灯がはっきり見えるようになってからは、しっかり避けてくれる車が多かった。そうでない車もいるので油断はならないのだが。


フォトコントロールのサイクリストの聖地碑とBIWAKOモニュメント
いつもスルーしてしまうので、実は写真を撮るのは今回が初めてだった。
 大津に近づくと渋滞がつらかった。近江大橋付近はガーミンのナビが役に立たず、Googleマイマップと数年前の記憶を頼りに進んだため時間が掛かった。京都方面への登りは、数年前は苦労したが今ではそれほど苦なく登れる。追分を通り過ぎたところで少し迷ったが、そこからゴールはわりと速かった。
 ゴールに着いたときには声がガラガラになっていた。走っているときに(;´Д`)ハァハァ し過ぎなんだろう。早く帰宅するためご飯や風呂には寄らず、周りへの臭気を抑えるためレインウェアを着て輪行した。駅のコンビニで何か買って食べようとしたが、ずっとコンビニ飯だったので食べたい物がなくて若干困った。京都土産もコンビニで買って、電車に乗った。さすがに普段より疲れていたので、最寄り駅から家まではタクシーを使った。やはり京都はちょっと遠い。
□ブルベぬいぐるみ同盟
 ところで今回、いつもと違うことをしてみた。

旅のお供である。オレはこいつと 旅に出るぅ♪
 以前からTwitterでハッシュタグ #ブルベぬいぐるみ同盟 というのが存在するのは知っていて、やってみようかなと思うことはあった。が、軽量化に反するし、あまり目立ちたくない気持ちもあったし、お気に入りが汚れるのに抵抗があったのでしなかった。なぜ今回することになったかというと、ブルベ5年生にもなって荷物がだいぶ軽量化されて多少は誤差だと思えるようになったのと、Twitterを続けている以上全く目立たないでいることは無理と悟ったのと、ちょうどぬいぐるいを買い足すタイミングだったのが重なったからだ。汚れはなるべく避けたいので、事前に防水スプレーを全体に吹きかけておいた。
 ブルベぬいぐるみ同盟の歴史は意外と長く、調べてみると10年前には少なくとも存在し(Twitter検索)、海外でも目撃例があるそうだ。サイクリストは道中で服装がよく変わるし、ヘルメット・アイウェアで顔もよく分からない、疲れた頭で名前も覚えていられない。だけどぬいぐるみには見覚えがある!…というふうに、個人識別に一役買っているそうだ。
 実際つけてみると、上記とは別に意外な効果があった。もともと高校生くらいまでぬいぐるみに話し掛けて頭を整理したり、勉強の監視役にしたりという習慣があったためか、ぬいぐるみがあることで走っている最中に自分を客観視することができた。もちろん普段から節目節目で自問自答しながら走っているが、それが”ぬいぐるみ問ぬいぐるみ答”になってさらに冷静になったという感じだ。
□あとがき
 本当は今年もう1本ブルベに出る予定だったが、子どもの体調不良かつ不急の認定のためDNSし、これが今年最後のブルベとなった。膝の痛みは結局治るのに2週間半掛かったのでちょどよい休みだったかもしれない。最後にふさわしい、記憶に残る氷点下サイクリングであった。正直なところ、氷点下にふさわしい格好ではなかったと思うので、できれば今後は避けたいところである(案外新しいアイテムを買い足しているかもしれない)。
 来年は、延期や中止なく例年並みにブルベが開催されることを祈りつつ、新しい走り方に挑戦していきたいと思う。
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