産後1年目でブルベ復帰、SR獲得を目指した話

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 この記事は、payanecoさん(Twitter)主催のロードバイク Advent Calendar 2021の20日目に寄稿するものです。年末、自転車に関連するいろんな人の記事を毎日楽しむことができる機会です。今年初めて参加させていただきます。前日はkysnrmさんの「エントリーロードを買ってみてどうだったのか」です。
 まず自己紹介をしますと、私は2017年からロードバイクに乗り始めたロングライド・ブルベが好きのアラフォーです。当初あまりロードバイクに乗っておらずもったいないと感じ、2018年からとりあえずたくさん距離を乗ろうとロングライドを始め、開催数が多くてエントリー費がお手頃なブルベに参加するようになりました。
 約2年前、妊娠が分かったときにできるだけ妊娠中・産後も自転車(特にロードバイク)に乗りたいと思ってネットで検索するも、あまり体験談がみつからなかったことが今回記事を書く1つの理由です。一般女性向けには自転車を制限するものがほとんど、逆に情報発信している女性はサイクリストを仕事としている・ハイレベルなアマチュアの方が多く、その中間がない―。私が記事を書くことで、その中間層の女性やパートナーの参考になり、今後のサイクリング計画に一役買うことができれば幸いです。
 妊娠中どう過ごしたかについては以前記事にしているので、リンクを貼っておきます。
妊娠・出産と自転車生活 Part 1: 初期
条件に恵まれて、この年もSR獲得できました。
 今年もSR獲得はしていますが、メダルが来るまでは確定した実感がなく、タイトルを”獲得した”ではなく”目指した”としています。

↑600km認定のときの写真です。
<目次>
□体はどう変わるのか

 [産褥期](産後2ヶ月まで)
 [授乳期・離乳食前](~6ヶ月頃まで)
 [保育園期]
□数値で見る変化
□脳はどう変わるのか

□走り方の変化(中間まとめ)
□育児×ブルベは総合格闘技

□体はどう変わるのか
[産褥期](産後2ヶ月まで)
 自分が一番気にしていた「出産後、いつから自転車に乗れるのか?」という疑問、出産したら容易に答えられるだろうと思っていました。が、実際体験すると一言では答えられませんでした(^_^; というのは、私の場合は妊娠高血圧症候群で帝王切開になり、子どもが小さくて1ヶ月間病院にお預かりとなり、予想と違うスタートになったからです。手術直後~2日後こそ後陣痛と創部痛がつらかったものの、以降は骨盤を通過した出産でないので下半身の痛みはなく、3時間おきの授乳もなく十分休んで、1週間後には元気に退院。退院翌日には1kmほど離れた実家まで折り畳み自転車で行き、さらに1週間後にはロードバイクでローラー練も再開。3本ローラーでは少しバランスが取りにくい感じはあるものの、帝王切開での出産”だけ”なら、経過に問題がなければこの程度で済むという例です。
 1ヶ月経過して子どもが退院すると事態は一変。3時間おきのミルク、ゆえに外出するのが難しい、夕方になると泣き出して寝ない…寝不足と閉じこもりで体力がガクッと落ちました。書類やインターネットを見ても目が上滑りして内容が頭に入って来ないし、頭の働きも遅い。通常なら最初の1ヶ月に相当することで、そりゃあ自転車どころではないと実感しました。あるとき折り畳み自転車で輪行したとき、ひさしぶりで時間が掛かったのは想定内でしたが、輪行解除して輪行袋を畳んで小袋に収納するときに握力が足りなくて入れられず納まりきらない、という自分にとっては衝撃的な出来事がありました。それ以来、意識的に外出する機会を増やすように心掛け、何とかローラー練をする時間を確保しようと努めました。
 振り返れば、ミルクが4時間おきに延びた頃が一番ローラー練をできていた時期でした。午前寝を始めた瞬間に家事そっちのけで着替えてZwift開始。子どもと別室になるので、ベビーモニターで様子を観察。


50分乗れたら超ラッキー、たいてい5~20分で何らかの理由で泣き出すことが多かったです。Zwiftのファイル更新に時間が掛かって始めることすらできないこともあったので、やる気がある日は事前にアプリを起動させておくことをお勧めします。
[授乳期(離乳食前)](~6ヶ月頃まで)
 ミルクの間隔が延びたらもっと乗れる時間が増えると思いきや、生後3ヶ月を過ぎると今度は覚醒時間が長くなって遊びの相手をしてやる必要が出てきて、再び時間が取れなくなってしまいました。また、生後3~4ヶ月までは体重が直線的に増える一方で首が据わらないために腱鞘炎になってしまい、ハンドルを握ったりバイクの整備をしたりする気も起きず、しばらく自転車に乗れませんでした。接骨院の先生によると、産後のこういう不調には睡眠不足も影響しているとのことで、男性にも起こりうるとのこと。なんびとも、睡眠不足には重々気をつけてください。
[保育園期]
 転機となったのは、職場の保育園に子どもを預けて生後5ヶ月で復職してからでした(法律上、産後56日過ぎれば復帰可)。これ以降、自覚的な体力は産後ちょうど1年くらい掛けて復調しました。保育園に子どもを預けたことで世話の時間が減って腱鞘炎は治り、職場の中の移動によってある程度体力が戻りました。しかし、ついでに売店ですぐ食べ物を買えるようになり体重が増え、当初9ヶ月でブルベに復帰だったのを、運動へのモチベーションアップのため6ヶ月に早める予定でした。このブルベは実際には延期の末にDNSしたのですが、もし予定通り開催されていたならば、ロードバイクのバランス感覚をつかみ直すのに1時間くらい掛かりボッチになり、体幹不足と体重増加で100km未満でお尻が痛くなり、どこかで前後輪両方ともスローパンクするという悲惨なことになっていたと思います。バランスに関してですが、子どもを抱っこしている時間が長いとボディイメージのデフォルトが抱っこ状態に近づき、1人のときでも姿勢や歩き方などが変になります。状況が許せばベビーカーやおんぶで移動するほうが、バランス感覚を戻すためにはよいと思われます。スローパンクに関しては、このブルベのために自分でチューブ交換をしたらいつの間にか空気が抜けおり、バルブ付近でチューブを傷めているのが判明しました。握力・腕力が戻りきっていないために起こったものと思われます。次のブルベのときは、某自転車チェーン店でチューブ交換をしてもらいました…。
 ちなみに、妊娠・授乳中はカルシウムを子どもに与えることになるため骨密度が低下するリスクがあり、出産後も無月経の期間が長いと骨粗鬆症のリスクがあるという報告があります。転倒して骨折しないよう、バランス優先でトレーニングしていくのが特に大事なところだと思います。
 では復職後順調だったかというと全くそうではなく、いわゆる”保育園の洗礼”という子どもの風邪が繰り返し移り、えらい目にあっていました。今年の4月に職場を異動したのを切っ掛けに市の認可保育園に転園させたところ、交わる子どもの人数が増えて風邪の移し合いが始まったのです。子どもが鼻水を出し始めたと思った翌日か翌々日には自分に風邪症状が出て、すぐ葛根湯を飲み始めても効かない。子どもは微熱でも元気なのに、親はひどいときは呼吸器内科に駆け込むほどでした。ウイルス性の鼓膜炎、内耳炎に移行して、ステロイドパルスを受けたこともありました。体重が1ヶ月で1kg減ったときもありました。程度の差はあれ、1歳になるまで月1~2回風邪を移され続けました。
 今はマスク着用が標準な世の中なので、子どもが口元を見る機会が減って言語発達に遅れが出るのではないかと言われていますが、長期的・統計学的に見ないとわかりませんが、保育園で会う0歳児クラスの子どもたちを見ていると杞憂なのかなと感じます。マスクをしていない年長児と触れ合う機会もあるし、言語より先に別の領域が発達しているかもしれないし、実際私がマスクをしていても笑いかければ笑い返すし、叱ると目をそらすし、順応している印象です。何が言いたいかと言うと、”家では口元を見せないと”とずっとマスクなしでがんばってきたのですが、風邪がうつされると分かっているのにぶっ倒れるほどがんばらなくてもよいのではないか、ということです。大事なイベントの前、一時的なものなら家でもマスク着用もアリだと思います。よだれからの接触感染も強力ですが、抱っこ時の飛沫感染のリスクは軽減できるはずです。

□数値で見る変化
 調子が戻っていった感覚をパワーの変化で示せたらいいなと考えていましたが、記録に残しているのが基本ブルベだけ(毎回コースが違う&距離が長過ぎて比べにくい)で、残念ながらあまり参考にならないのではないかと思います(^_^; 調子を比べるのであれば、同じコース(ワークアウト)で、パワーと心拍数を見るのが鉄則ですね。自転車通勤をロードバイクでしていたらよかったのですが…。
 体重計はタニタの体組成計 インナースキャン50Vを使用。体脂肪率や筋肉量なども出るのですが、妊娠・産後の値は想定されていないので割愛します。産後2ヶ月後ほどで、”妥当な数値”が出るようにはなりましたが、落ちているはずの筋肉量が妊娠前と同程度でしたので参考にはできません。
 パワーメーターは、もともとPowertap P1(両側センサー)を使っていたのですが、Garmin Vector 3S(左のみ)に変わってから時々ハッピーメーターの挙動をしており、信用ならないデータもありますがあしからず。
 心拍モニターはWAHOO TICKER FITを使っています。金属アレルギーがあるため、いわゆる乳バンド式のモニターだと皮膚がただれるためです。やや難点なのは、ずれないように固定するコツが要るのと、ウェアを重ねると測定開始時にボタンを押したつもりが押せてないことがあることです。というわけで、結構測定が抜けています。
 まず産前産後のFTP(ZwiftのFTP test (shorter)を用いたもの)の結果を見てみます。ただ、前後で測定したジムが変わり、産後のほうはレンタルの自転車のサイズが合っていなかったり、応援してくれる人がいなくなったり、やや条件が悪くなっています。

特筆すべきは産後の最大心拍数の低さ。最大心拍数の概算は220-年齢で、180は下らないはずですが、1年以上にわたって”がんばり過ぎないで”、”無理しないように”と自分に言い聞かせ続けた結果、どうやら過度のリミッターが働いてしまっているようです。どんなに気合を入れてもこれ以上無理とがんばっても、心拍数を上げることができません。FTPテスト後、以前であれば当日・翌日は「しばらく自転車は乗らなくていいかな…」と思うところ、「今度いつ挑戦しようかな?」と思う時点で全然パワーを出し切れていないのです。本当はZwiftのメニューを使って鍛え直していきたいところですが、練習時間の確保が難しいので、自転車通勤中で”ここだけは全速力で”という区間を決めて毎日取り組もうかと考えています。
 さすがにこのFTPで以前と遜色ないペースでブルベを完走できるとは思えないのですが、心拍の上がらないほどほどのペースでも走り続ければ特殊なコースでなければ完走できるということでもあると思います。
 次に実走のデータを並べてみます。パワーは長距離でもあまり変わらずFTPの参考にもなる20分最大平均パワー(MMP)を採用しました。

妊娠中は心拍数を上げ過ぎないように、意図的にペースを落として走っています。妊娠中の運動については、英語ですが「The Pregnant Athlete」が詳しくて元気が出る良本ですので、オススメしておきます。

The Pregnant Athlete: How to Stay in Your Best Shape Ever — Before, During, and After Pregnancy (English Edition)

グラフ上のブルベお休み直前は600kmブルベでしたが、これに至っては20分MMP 111Wで39時間ちょいで完走しています。思っていたより省エネで完走できるのかもしれません。
 先にパワーメーターの紹介で書いたように、右のほうで一部ハッピーメーターが働いていますが、それを除けば1年以降~1年半足らずでパワーが復活してきているように見えます。これはだいたい自分の感覚ともマッチしています。
 産後に一度増えた体重が減っているのは、職場が変わって車通勤から自転車通勤になったためです。折り畳み自転車で片道15km/1時間のほぼ平坦路を平日ほぼ毎日、ネット20km/h前後で走っています。ちょうどよい有酸素運動のようで、驚くほどの体重が減りました。ローラー練のように足を動かし続けるよう心掛けているためか、ブルベでも無意識に足が止まることはあまりありません。そのほか、どれくらい飲料・カロリーが必要なのかが、”あと通勤片道2回分なら大丈夫”などと直感的に分かるのも、無駄な休憩を省けることにつながっています。毎日乗れる環境を作るのはとても大事です。

□脳はどう変わるのか
 副題のわりに科学的なことは言えなくて恐縮ですが、”マミーブレイン”(ミイラじゃないよ、Mommyだよ)の経験談です。日本語では”産後ボケ”と言われますが、その響きから来るイメージと違ってもう落ち着いただろうという頃にやってきました。それまで産後ボケとは、出産直後の頭の働きの悪さのことだと思っていました。マミーブレインを象徴する出来事が、まさかのコース逆回りDNFでした。
1年ぶり復帰ブルベ…→結果DNF
職場でも相手の名前を自信を持って間違えたり(思い込み)、”記憶にございません”的なことが何回か起こったり、なかなかつらい時期でした。NHKスペシャルで認知症医療の第一人者の長谷川和夫先生が自分が認知症になって”確かさが少なくなってきた”と語っていましたが、それがよく分かりました。要因としては、職場が変わったこと、それによって寝不足が続いたことがあったと思います。夫にも負担を掛けたようで、この時期は買い物で同じ物をだぶって買って来たり、洗った食器に汚れが残っていたりと、らしからぬ失敗をしていました。睡眠不足には重々気をつけましょう。
 1年経つ頃には自然と戻り、不思議と判断の速さは出産前より速くなったように感じます。ブルベ中の休む・休まない、止まる・止まらないなど、思い切りがよくなりました。あと、仕事が規則的になったことも影響していると思いますが、短期的な睡眠不足にはかなり強くなり、安全に起きていられる時間が長くなりました。それがブルベでは速度のマイナス分を補っている可能性がありそうです。これはいつまで続いてくれるのでしょうか。

□走り方の変化(中間まとめ)
 妊娠前までは、”調子のよい間にタイムを稼いで、それ以外は耐える”という走り方でした。それが”がんばり過ぎない”と言い聞かせ続けた結果、心拍数を上げて本気で走ることが難しくなり、でもほどほどのペースであまり体も脳も疲労せずに走れるようになり、休憩時間の節約や判断の速さでタイムを稼ぐように変わりました。ゴールタイムはあまり変わりませんが、翌日の疲労は以前より少し減っている気がします。

□育児×ブルベは総合格闘技
 総合格闘技と称した理由は、サイクリングにおける心・技・体だけでなくて、生活力や運含めていろいろな要素があるからです。単に言ってみたかっただけでもあります。
 大阪在住の私は、ブルベ開催数が世界トップクラスのオダックス近畿による、スタート地点が近場のブルベが少なくなく、恵まれていました。そうでなければ中止・延期が相次ぐ中、SRを取るのは極めて困難だったと思います。オダックス近畿の皆様に感謝です。以下に、今年の完走分の記事を載せておきます。
200km: 初代鐘ヶ坂トンネルを通る
300km: 茨木発夜行(鈍行)岡山行き
200km: BRM100周年記念ブルベ 高野山行き
400km: 神さまのいるほうへ
600km: 【足に】季節移れば難易度変わる【やさしい】
 また、子どもの体調がたまたま出走の日には安定していたのもありがたいことでした。今年最後に予定していたブルベは、子どもの体調不良かつ不急の認定だったのでDNSしました。
 週末ブルベの準備や帰宅後について、記したいと思います。前日、可能なら少し早く仕事を終えて帰ってきて子どもを早めに寝かせます。が、普段は寝つきがよいのに、早めに寝かせようとするためかこちらの焦りを感じ取るのかすぐ寝ないことが多く、なかなか時間を稼げず困ったものです(^_^; 前泊する場合は、だいたい子どもが寝てから夫が帰宅してバトンタッチとなります。
 最近は子どもに手が掛かることが減って夫に世話を任せやすくなり前泊もするようになりましたが、最初はスタート地点が始発圏内(タクシー輪行含む)・自走圏内のものに限っていました。”手が掛かる”というのが具体的に何かというと、我が家の場合は食事の世話です。まだベビーフードを食べられるほど離乳食が進んでいない、アレルギーの有無がはっきりしない頃の離乳食や間食の準備は、離乳食作りが苦手な私にとってはとても大変でした。コース逆回りDNFはちょうどこの時期でした。それが徐々にベビーフードや夫が作った物を食べられるようになり、さらに食べさせなくても自分で手づかみで食べるようになると、だいぶ楽になりました。
 2日にわたる300km以上のブルベのときは、ベビーシッターを頼むようにしています。休日でも仕事のある夫の負担を減らすためでもあり、私が帰宅してからしばらく休憩したいからでもあります。スタート地点が近くて交通費・宿泊費が掛からなくとも、それに相当する費用は掛かっていると思います。趣味を楽しむには仕事も大事ですね。
 帰宅してから休めるのかというと、なかなか休めません(^_^; 古いマンションに住んでいるため、自転車を当日中に室内に入れないと防犯上もスペース上も問題があり、帰宅して即最低限の自転車掃除が必要です。また、たいてい子どもの食事の準備、汚れ物の処理、保育園の準備などいずれかが残っています。なので余力を残して帰宅しないといけません。走り方が変わった理由には潜在意識にこのこともあるのでしょう。
 以上、この1~2年の体験をまとめてみました。来年は自分なりにもう一段階レベルアップしてブルベに参加したいと思います。皆様、来年も楽しい自転車生活を(^_^)/
 明日のロードバイク Advent Calendar 2021はK_LL9さんの「新社会人がトレーニングを維持・継続するために意識していること」です。

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