~前置き~
昨年のブルベのオフシーズン、初めての妊娠が判明した。妊娠中にスポーツをするのは今や珍しいことではなく、医学的に許すなら子のためにも親が、自分が楽しくあるべきだと思い、趣味である自転車での運動(主にロードバイク)を続けた。よく注意力が落ちて事故に遭いやすいから、転倒のリスクがあるから避けろと言われることが多い自転車。自転車・サイクリングについてのポジティブな情報にはあまりありつけなかったので、誰かの参考になればと思い記事に残すことにした。
直接このページに来た人のために簡単に自己紹介をしておくと、ジャンルというか走り方はロングライド・ブルベが好きでレースや強度の高いトレーニングはしない、ロードバイク歴3~4年のサイクリストである。健康診断で連続して引っ掛かる項目は特になし。体型はBMI 21.6。仕事は医療関係。夫も同業。ここまでのリスクは許容する、という選択を日常的にしているので、自信を持って自転車生活を続けられたと思う。
そう書くと順調な話が続きそうなものだが、実際には高齢初産で妊娠高血圧症候群・子宮内胎児発育遅延からの緊急帝王切開で、最後は大変だった(自転車・運動が原因ではない、念のため)。現在は母子ともに落ち着いて、産後のことも含めて何回かに分けて書くつもりでいる。
今回は妊娠初期(~15週・4ヶ月)について。
□妊娠前
2019年はブルベに月1~2回参加、それ以外は週1回Zwiftスタジオで練習するというのが習慣だった。オフシーズンに入ってZwiftは続けていたものの、職場が変わって拘束時間が長くなり、実走は距離・頻度とも減っていた。仕事量としては楽になる一方で拘束時間が長くなるものだから、コンビニ飯が増えて体重が2ヶ月で2kg近く増えてしまっていた。運動量が少ない、体重が増えやすいという傾向は、産休に入るまで続いて苦労することになった。
その他の習慣としてあったことといえば、サプリメントでの葉酸摂取だ(髄膜瘤など神経管閉鎖障害のリスク低下に、妊娠前からの葉酸摂取がよいとされている)。もともと湿疹・肌荒れ対策にマルチビタミン、貧血予防に葉酸・鉄剤を以前から飲んでいて、それで兼ねていた。サプリメントはよいとは言い難い食生活に助けとなった。
□自転車生活の計画
妊娠してから「The Pregnant Athlete: How to Stay in Your Best Shape Ever — Before, During, and After Pregnancy」という英語の本を急いで買った。

著者はトライアスリートで、前書きでウィリアムズ産科学という教科書中の教科書を「運動についてはほとんど書かれてないやん」(意訳)と軽くディスっているだけあり、実践的な内容が細かく書かれている。読むと、元々運動していて妊娠経過に問題がなければ、かなりの運動ができるのだなぁとポジティブになれる1冊。妊娠前に読むのもいいと思う。ちなみに、日本では0~4週を1ヶ月として計算して10ヶ月目が予定日になるが、欧米だと1ヶ月目は6週間とするので最後は9ヶ月になり、読むときにずれを補う必要がある。ちなみに後から母子手帳を入手したが、内容の多くは当然子どものことで、妊娠中の運動については記述なしだった。
妊娠が確定したのは2ヶ月だった。俗には運動や旅行をするなら安定期(16週・5ヶ月)からなどと言われるが、それまでの不安定な時期は流産しやすいとはいっても原因の多くは染色体異常なので、運動が問題になるとは考えにくい(高体温は避けたほうがいいという話は聞く)。むしろ、胎児体重が500gを超えて出生後の死亡率が下がってくる22週以降のほうが大事ですぐ病院を受診できるような場所にいたほうがいいと考えた。そこでざっくり20週までにブルベでSRを獲れるように計画した。それ以降は、体調に応じてのんびりサイクリングやキャンプをしよう、などと考えていた。
出産後は仕事には4ヶ月目に、普通のロングライド(150km程度)には半年後に復帰したいと考えていた。ブルベは長時間なので時間の確保が難しいとしても、何かイベントで完走して体力が戻ったと実感したいと。産休は出産後約2ヶ月取得できるが、もう少し子と関わりたいと思ったので育休を追加で1ヶ月、というのが仕事復帰の基準。競技に復帰しているアスリートを調べてみると半年が多いと感じたのがロングライド復帰のめやす。出産後はなかなか自転車に乗れないと当然予想はしていたが、モチベーション維持のため新しいバイクを買うことも決めた。
□初期全般
妊娠が確定した週にとりあえずFTPテストをしてみた。段々と伸びてきているのを実感していたので、パワーが落ちてしまう前に一度チェックしておきたかった。結果は160W(PWR 3.08)で自己最高だった。戻すときの目標がこれで定まった。
これ以降、妊娠による体重の増えやすさにストレスでの過食が加わって、しばらく2週間で1kgのペースで体重が増えてしまった。病院では20週までは炭水化物を減らして運動をするように指導された。そこでコンビニ飯のうち1食を苦手なそばに置き換え、間食は普通のデザートからプロテインに変更し、体重コントロールに努めた。ちなみに、母子手帳ではカロリーのめやすが2000~2200kcal/日となっているが、20~49歳もひとまとめなのはどうなのよ、と突っ込みたくなる(厚生労働省HPのソース)。また体重増加のめやすはBMI 18.5~25は最終+7~12kgとされていてるが(厚生労働省HPのソース)、クリニックに健診に行くたびに「体重増加が多いと子宮収縮の反応が悪くなる」と厳しく言われ、BMI 21.6で+8kgに抑えるよう努力した。極端なダイエットで体重が増えないのは問題だが、普通の体型でこれほど制限されるのが実際なのだから、内容を刷新してはくれないのだろうか。

8週になってからは、食前・食後問わず、体を動かすときに軽いえずきが出るようになった。いわゆるつわりである。物事に集中していれば気にならなかったので、程度としては軽かったと思う。しかしとても疲れやすく、仕事から家に帰ると入浴時間までぐったりと寝るという日がほとんどで、自主練はする気になれなかった。もしチームなどに入っていてスケジュールが決まっていたら、練習に出ることはできたと思う。練習といえば週1回スタジオに行ってやるZwiftのみだったが、それは特にしんどいとは思わなかった。この時期、200kmのブルベを完走した。ブルベについては後半でまとめて少し詳しく書く。
えずきは11週で治まったものの、12週から胃の不快感(げっぷ・胸焼けなど)が出てきて15週頃まで続いた。私にはこれがつわりよりきつく、やはり自主練は全くする気にならなかった。同じ頃に便秘も悪化したが、こちらは13週をピークに改善。その代わり、14週から頻尿(というか、いきなり来る尿意切迫感)が始まった。この時期には400kmを完走した。
□ブルベ
ブルベのときに以前と変えたことがいくつかある。1つはカフェイン入りのエナジーゼリーをやめたこと。カフェイン入り飲料は1日3回までと決めて、眠気覚ましのコーヒーなども、いつもよりタイミングを計って飲むようにした。
もう1つは、トンネル内はできる限り車道を避けて歩道を徐行または押し歩きするようにした。トンネル内の車道を自転車が走行していることを想像していないドライバーによる事故は大事になりそうで、一応2人分の命が懸かっているので避けたかった。トンネル内の歩道は狭かったり突然なくなったり条件がよくないことも多く、普段は路面の比較的よい車道を、できるだけ速く、車が近づくまでは少し右側に寄ってアピールして走っている。
あと1つ、母子手帳と一緒にもらったマタニティマークのキーホルダーを、保険証とかかりつけの診察券と一緒に財布の中に入れておいた。万が一の事故のときは普通はこれで妊婦と分かるだろう。結局、マタニティマークはブルベ中の財布の中にしか使わなかった。でもあってよかったと思っている。
つわりの時期の200kmブルベでは、出発時点では軽いえずきがあったが5分程度で治まった。このときの問題は走り込みが足らなかったこと。記録を読み返すと80kmくらいですでにバテている。要因の1つは、愛飲していた高カロリージェルがカフェイン入りだったため避け、しかし走りながら補給できるような携帯食を準備していなかったため補給が遅れたことだったと思う。

400kmブルベは得意なほうな距離だが、このときは過去2番目くらいに苦労した。軽い胸焼けのような胃の不快感のせいで空腹感がなく、足が重い感じがしてから補給不足に気づく、という状態だった。漢方薬やゼリー飲料、温かい物が効果的だった。尿意切迫感でトイレ休憩が多くなり、コースのわりには時間が掛かってしまった。
数値の記録はあまり残っていないが、Zwift・ローラー練を振り返る限り、1時間程度であればパワー、心拍数は特に変化はなかったように思う。実走では心拍数を上げ過ぎないようにコントロールしていた。私の安静時心拍は76bpm、最大心拍数は183bpmだったが、できるだけ165bpm以上にならないようにペース配分をした。
以上のように初期は特にトラブルなく経過した。次回、中期(前編)に続く。
妊娠・出産と自転車生活 Part 1: 初期
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