今年もブルベでSRを取るため、最後に残していた400kmを佐賀県まで走りに行った。AJ福岡主催のBRM704基山400kmである。サブタイトルは初夏の阿蘇。AJ福岡の参加は出産前の2019年以来で7年ぶりだった。
準備

阿蘇といえば登るイメージだが、406.9km(ゴールから受付までの経路を含む)で累積標高3,783mと、全体としては抑えられているルート。天気予報は2日間にわたって雨だった。初めて走った300kmブルベが同じ佐賀発着で、終日雨だったので”またかよっ!”と思った。ちなみに、この300kmを何とか完走できてしまったことが、ブルベにはまり、雨でも走る人になってしまった分岐点である。このときAJ福岡のスタッフの皆さんにとてもお世話になり、本当に足を向けて寝られない。”誰でも最初は初心者だったんだよ”ということで、その記事もリンクしておく。

雨なので阿蘇の下りを考えると、ディスクブレーキのロードバイクで本当は行きたかった。ただこのロードでは28Cの普通のグラベルキングを使っていたが、新品は硬くて自力ではめられず、近所のチェーン店に持ち込んだがメカニックさんさえ苦労していた。パンクしたら対応できないんじゃないかという不安が募り、最近パンクの経験を積みつつあるブロンプトン(元C Line Explore)を選択した。
前泊は受付まで2km程度の場所にある基山キャンプ場にした。

荷物を持ったまま走るので、できるだけキャンプ装備は減らした。
水没その1
朝5:30の受付開始に合わせてキャンプ場を出発。夜からずっと雨が降り続けていた。スタート地点に着くとすでに参加者が数人いて…数人もいるのかよ…。物好きな人たちがいるものだ。ここでは普段ミニベロで走る人も珍しくないようで装備を観察されることもなし。私以外はディスクブレーキで、わざわざそのためにクロスバイクを選択した人もいた。

6:00、後から来られた人も合わせて8人が出走した。
29.4km地点のPC1のコンビニまでは平坦。少しミスコースはしたが、ほぼ予定通りの時刻で到着した。

スタッフさんや参加者と雑談して再出発。PC2は90km先で、その間に阿蘇の登りが含まれる。そこまでの休憩ポイントとして、コンビニと道の駅をいくつか目星を付けておいた。
雨は降ったりやんだりだったが、とにかく蒸し暑い。ちょうどいいタイミングで見つけた自動販売機(自販機)で飲料休憩にした。前回走った韓国1200kmブルベでは全く道端に自販機がなかったので、補給がイージーでうれしかった。

68.1km地点の竹原峠(たかはらとうげ)を越えて大分県に入る。1つ目の登りをクリアした。ここから約10km下り。しばらく脚を休ませていたが、防水ソックスの中に水が溜まっている感覚が強まってきた。靴の中に水が溜まったときも”水を踏む”感覚はあるが、今回は不快感を伴っているので浸水しているに違いない…。路肩に停まってソックスを脱いでひっくり返してみると、ジャーっと水が出てきた。浸水の原因は、恐らく靴を履くときに防水ソックスにテンションが掛かり過ぎて、ソックスがずり落ちてきたせいだと思う。気づいたときには履き口がくるぶしまで落ちてきていて、レインパンツの裾の隙間から靴下の中に水が入り込んだものと思われる。普段の5本指ソックスを履いて、足を濡らしたまま走ることにした。
阿蘇
90.5km地点、阿蘇郡小国町(おぐにまち)のコンビニで昼食にして、阿蘇の登りに備えた。少し手前で車から手を振って応援してくれた人がいて元気が出た。出発すると雨がびしゃーっと降ってきた。雨は降ったりやんだりだが、降るときはスコールのような強さだった。
阿蘇の登り、といっても標高830mくらいのところをかすめるだけだが、ブロンプトンだと本当に長かった。雨があまり降っていなかったのが助かった。

緑に覆われた丘が美しい。

ボスを倒して気持ちよく下っていると、左手のほうに湧水ポイントが現れる。

手野の名水と掲げられていて、わざわざ車で来たらしき人も見た。というか、自転車で下ってくる人のほうが珍客だわな…。


ここの水はぬるくなっても美味しかった。
約120km地点のPC2のコンビニには、借金10分で到着。しかし私のざっくりした計算では50分遅れだったので、登りのほとんどは前半にあるとはいえ、巻き返せるかとても不安だった。
遠い平地、稼げぬ平坦
まだ7kmほど登らないと下りにならない。今まで時間をたくさん費やして散々登ってきたのに、この7kmの長いこと。ようやく下りになったと思ったら、晴れて日が出てきて暑い。雨でも晴れでも文句が口から出てくる。
途中でコンビニ休憩をはさみ、まだまだ下りでタイムが稼げるぞ、と思っていたら前輪がガタガタしてきてスローパンクを確認。ブロンプトンはクイックリリースではなくてパンク修理に時間が掛かるので、変な物を踏まないようにロードバイクのとき以上に気を付けているが、それでもやってしまったか。ちょうどスペースがあったのですぐ停まり、パンクの穴が分からなかったのでチューブごと交換した。雨が降っていなくてスムーズだった。
206km地点、PC3のコンビニには貯金50分くらいで到着。ここも私のざっくり計算では、25時間ゴール目標だったので半分の200kmで12時間半目標、つまりは20分遅れだったので、少し遅れているなという認識だった。25時間半ゴールに目標を変更する。

ここからは大分の別府湾沿いに平坦区間が続く。やや追い風で調子はいいが、信号が多くて思ったほど進まない。気温はさほど高くないが、停まると蒸し暑い。
夜の耶馬渓
杵築市(きつきし)の自販機で飲料休憩をしてから後半のプチ登坂に入った。250kmちょっとでクイズポイントがあったが、ここは本当に暗かった。ブルベのクイズポイントは、その地点に行けば簡単に分かる時間とか番号とか数字に関する問題が多い。9年目でこれで2回目だろうか。珍しいので少しワクワクする。
波多方(はだかた)峠をトンネルで越えて下り、国東半島を横切り、また海に近いところを走っているうちに日が変わる。

このブルベ唯一のフォトチェックの中津城。ひさしぶりに他の参加者も見かけて元気が出てきた。
ここから山国川に沿って耶馬渓(やばけい)方面へ。耶馬渓の地名は、ヒルクライムファンライドのツールドやばけいで知っていて、どれくらい登るのか、どんな所なのかちょっと楽しみにしていた。

が、時刻は未明。昨日の雨で増水した川の音を聞きながら、景色は見えないまま緩やかに登っていく。蒸し暑くて喉の渇きがなかなか止まらず、コンビニや道の駅やまくにで計3回の飲料休憩をはさみ、大石峠(おしがとう(難読!!))をトンネルで越えて、ようやく最後の峠をクリア。
明らかに飲み過ぎで、下り基調の24kmで一気にいくべきところなのに1回トイレ休憩が必要になり、夜明け頃に370.5km地点、PC4のコンビニに到着した。残りは30kmだけなので、補給用に軽食を買ってさっと出発した。
水没その2
夜明け前から雨がパラパラしていた。この日も降る予報だった。ゴールは駅近で隣がコインランドリーだったので、ゴールしたらウェアを洗濯機に突っ込んで、ゴール受付を済ませてから戻って駅に行けばちょうどよいと思っていて、レインウェアは着なかった。
右側からの北風が段々と強くなってきた。ミニベロのブロンプトンは横風の影響を受けにくいので、速度は安定していた。が、残り約7km地点で右折して北西に進むことになると向かい風を受けることになった。頭を下げて空気抵抗を減らしながらしばらく進むと、空が急激に黒くなり、強い雨粒が落ちてきた。最初は車道の白線右側を走っていたが、さらに降ってきて車からの視認性が悪そうに感じたので、白線の左側に完全に入った。そのまま進むつもりでいたが、雷が鳴り、視界が雨で遮られる状況になったので歩道に避け、雨宿りできる場所に移動した。間もなく頻回な稲光と雷鳴、水を上から流すかのような滝のような雨に見舞われた。雨が吹き込むので雨宿りもさほど意味がない。
雨粒でうまく作動しないチャック付き袋に入れたスマホで天気を確認すると、線状降水帯が発生していて3時間くらい降り続けるらしい。降るとは聞いていたが、ここまで降るとは聞いていない。というか知らなかった。お天気アプリを見ていても。残り6kmまで来て時間も余裕があるのにDNFなのか…?

15分ほど待っていると雷が落ち着き、普通に車道を走ってもよいくらいの雨になってきた。出発しようとするとシャーっと参加者1人が通り過ぎて行き、判断が早いなと思った。
途中の交差点で車が変な挙動をしているな、と思って通り過ぎると、左手のほうで冠水していた。さらに進むと前のほうで冠水していて車が動けなくなっていた。後続の参加者に合図を送って歩道をゆっくり行くと、ほんのごく一部で深くなっていたようだ。往路でも通った駅下のアンダーパスが心配だったが、車が通ってくるので進むだけ進んでみると、漕げる程度の冠水だった。
笑えば…
都市の機能がやられているのを直で見るのはなかなかショックだったが、ゴールのコンビニが近づくと現実に戻ってきて、「帰りの電車は動いているのか?」と思うようになった。コンビニの店員さんに聞いてみると、「さぁ~、すぐ止まりますからね~」とあっけらかんとにこやかに言われた。こういう状況に慣れているんだなと感じた。
雨は降り続いていて、コインランドリーで洗濯してもまた濡れるだろうと、そのままゴール受付に向かった。道中臭かったジャージは雨で洗われて臭わなくなっていた。ビブはそうもいかないが、後でレインウェアを着て臭気を抑えよう。受付に行くとスタッフさんたちが暖かく出迎え、私たちの話をにこにこで聞いてくださった。…その反応を見ていると、この方たちも多分ブルベに限らず天候の問題の経験をしてきて、いろいろな景色を目の当たりにしてきたんだな、というのが何となく伝わってきた。参加者の話で印象的だったのは、雷が発生した瞬間、「空が赤くなるのを見た」というものだった。赤くなるんだ…。
電車は案の定運休していたが、和やかににこにこされているうちに気持ちが落ち着き、ゴールで買ったおにぎりを食べ、スタッフさんに温めていただいたお茶を飲みながら帰り道を考えた。博多からの新幹線は動いていたので博多まで23kmほど自走することも考えたが、ほどなく電車が動き出したことが分かり、帰路に就いた。

博多駅まで出られれば一安心。珍しくラーメンを食べた。
こうして今年のSRが確定した。私の中では佐賀にはすっかり雨の印象がついてしまった。
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