この記事は、payanecoさん主催のロードバイク Advent Calendar 2025 3日目に参加して書いています。前日はPikaCyclingさんの「四国一周自転車旅行まとめ」でした。
去年参加したときの記事はこちら。

毎年投稿の機会をいただき、ありがとうございます。
はじめに
ロードバイク歴8年目、昨年2024年の明け、オーダーバイクのHGSBT (エイチジーエスビーティー)がうちにやってきた。フルカスタムのスチール、機械式ディスクブレーキ車である。この年は出産でほとんど乗れず、今年ようやく乗り出して合計で2500km。完成したら走ってみたいと思っていたSR600も完走できたので、一旦まとめたいと思う。個人の感想よりカチッとしたものを読みたい方は、バイシクルクラブ11月号「金属フレームの魅惑」の特集で取り上げられていたので、そちらをどうぞ。
なぜオーダー車なのか
もともとはスペシャライズド(Specialized)のAMIRA SL4 Sport (ウェブサイト)に乗っていた。それまではTREKのクロスバイクに乗っていて、メリダかジャイアントのアルミロードへの買い替えを検討していた。寒くなり始めたある日、手袋を買いに近所で有名どころのスポーツバイク店に入り、当時知らなかったメーカーのカーボンロードを注文して出てきた。このモデルは女性用&リムブレーキの最後のほうになる。身長155cmに対してフレームサイズは48、完成車でコンポは105がメインでブレーキはTiagra、その他はスペシャのデフォルトといったところで20万円ちょい。お手頃価格だったと思う。
さて、”ロードバイクって快適♪”となるはずだったが、想像に反してクロスバイスより走らなかったのが、自分の乗り方とパーツに向き合う原点だった。思い返せば運動経験がなさすぎて、軽量なロードバイクでバランスをうまく取れず、適切なギア比を選べなかった、だけなのだが。ポジションを変えたり体力作りをしたりと工夫し、距離をたくさん乗るべきだと考えてロングライドイベントに参加し、ブルベにはまった。その結果、4年くらいで最初から残っている物がフレームセット(一部加工済み)とディレーラーハンガーしかなくなってしまった。
その頃からいわゆる山岳系ブルベ、SR600を走るようになり、体を痛めることが増えてきた。握力に自信がないため(といっても平均程度)、下りではほぼ下ハンでブレーキしていた。山岳系では道が荒れがちなので、凸凹で手のひらの側面に強い衝撃が加わって、薬指と小指にしびれ感が出るギヨン管症候群が頻繁に起こるようになった。”自転車は生涯スポーツである”とあるスクールで教わり、そのつもりで乗っていたのだが、”これじゃ無理じゃね?”と思うようになった。他にも身長が低いゆえにフレームサイズが小さく、積載に関して不満な部分がいくつかあり、市販車からまたやり直すつもりはなかった。

決め手
初めてHGSBTを見たのはとあるスクールだった。しなやかな魚のようだった。あれを見たら欲しくなる。尼崎(兵庫県)の工房とのことで、自宅からも職場からも近く、ショップにメンテナンスおまかせ派の私にはありがたい。
一応試乗はしておきたいと思い、淀川河川敷の背割堤のチャリサイに行ってみた。試乗車はいかにもレース用といった硬めのサドルに電動変速。レース勢でなくても何か感じるんやろか、とゆるゆると走り出す。電動変速ってスムーズだなー減速しないんだなー、などと思っていたら、”うわぁぁぁあ゛ぉぁ!!” (心の声) 自転車の進む勢いに任せたら脚が回り過ぎてコース半分だけで息が切れて終了(@_@;; 自転車そのものに引きずり回されるだなんて想像していなかった。
この意外性。どうせ乗るなら単純に反応する自転車よりも、面白い自転車がいい。
要望
HGSBTはビルダーの東畠さんの頭文字から名づけられていて、工房名はBicycle Planner (ウェブサイト)。直接伺うのが容易な距離だったので、初回打ち合わせと要望を煮詰めた2回目で正式なオーダーに進んだ。まず主な想定使用シーンを”1000km以上のブルベや山岳ブルベ・SR600をキャンプ泊しながら走りたい。PBP 1200kmが目標。”と伝えたところ、凹凸でカーボンのような負担が体に来ないので荒れた道を含むロングライドに合っているという話だったので、自分向けだなと思った。そこから、特にこだわりの3点をまず詰めた。
1-1. テントポールをトップチューブ下に収まるように取り付けたい。
→「できますよ」(即答)
1-2. 面ファスナーで留めるとずれてきて落ちそうになる。
→「何か考えてみます」(後述)
カーボンだとフレーム径が太く、サイズが小さいフレームだとテントポールを斜めにして左右に少しはみ出さないとトップチューブ下に固定することができない。が、径が細くなるので解決。またイマイチ固定もしにくく、スローピングのため後方に滑って落下しそうになることに困っていた。これもフレーム側の工夫で解決。後ほど写真で。
2. 大きめのサドルバッグ(14L)を取り付けたい。
→トップチューブはスローピングする必要あり。
憧れのホリゾンタルは憧れのままであった。
3. カーボンホイールにして軽量化したい。安価で。
→手組対応
あとは、自分で凝ったメンテナンスはしないのと荷物を付けるときに煩雑なる可能性があるので、ケーブルはできる部分は内装に。
ボトルケージ用ダボ孔はダウンチューブ下のツールケース用を含めて3ヶ所に。
フロントフォーク両側にライトマウント用のダボ孔を増設。
トップチューブ上部にトップチューブバッグ固定用のダボ孔を増設。
今までリムブレーキに慣れているので、ディスクブレーキになるなら「機械式で十分でしょう」ということで機械式に。
変速は12速・電動化も迷ったが、充電管理に自信がないのと、ラ・クランクのショートクランクにすると12速はないとのことで11速・非電動にした。ギア比は元は50/34×11-30T (1.13~4.54)だったが、トップは使わないしローはもう少し軽くしたくて40T×42T相当(0.95)~50T×13T相当(3.84)を希望した。ただ大きいスプロケットは歯数の差が大きくなるのでお勧めされず、47/31T×11-30T (1.03~4.27)となった。
ハンドルは、3T(スリーティー) ERNOVA PRO ロード用 アルミ ドロップハンドルバー 420mmを自分で準備。ドロップのC-Cが42cm、上部のC-Cが40cmというちょいフレアハンドルだ。グラベルロードに乗るとフレアハンドルで下るのが楽で、しかも手の向きからギヨン管症候群を避けられるということに気づいてロードに採用した。女性にしては幅広だが、腕力・上半身の筋力がない人が狭い手の間隔で腕立て伏せする苦行を想像してほしい。体格だけで決めるものではない。
タイヤはそれまで同様、普通のグラベルキング26Cをチューブありで使用する予定だったが、グラベルも乗るので28Cを勧められた。要望ではないが、心配していた雨天での錆びは、「メンテナンス時に対応するので気にせず乗ってください」とのことだった。
どこが変わったのか

納車日、自走で帰宅する。全体的にギアが軽くなったこともあり、進んでいる感触が分かりにくかった。よく進むスイートスポットが掴みづらい。雲の上で散歩をしているような。よくカーボンのほうが反応がいいとか、クロモリはグニャグニャするとか言われるのはこういう感触のためかと思う。ちなみに、手持ちの車体で一番適当にどう漕いでも進む感触がするのはチタンのブロンプトンである。あれは不思議な乗り物である。
漕いでいるうちに、”何か力がうまく伝わっていないんだろうな”というのが分かってくる。そして“今の力は無駄無駄~、はい、お釣り。”というかのように、漕いだのに使われなかった力が余力として戻って来るような感触が出てきた。だいたい漕いだ力の20%くらい。どんだけペダリング効率悪いねん。それを整えていく作業が楽しみだった。
3本ローラーに乗ってみると、ホイールベースは以前と変わらないのに、前後に揺られて前に自転車ごと飛び出してしまいそうで苦労した。実際に前には飛び出さないものの、何度か時速0キロ落車をして怖かったので出産前は封印し、産後に乗り方を忘れた状態で漕いだら普通に乗れるようになっていた。漕ぎ方を工夫していく過程というものを十分味わえなかったのが残念だ。
実走で印象深かったことは、”凸凹で減速しない”ことだった。これは2024年のフレッシュ(Flèche)の記事で触れた。

グループで後方を走っているときに、凸凹があると車間が詰まってしまうのだ。
SR600KRをキャンプしながら走ってみた (ダイジェスト)
さてようやくタイトル。マイナートラブル続出の珍道中で、記事にしたら本人が楽しいレポートにはなるけれど、それでは車体のことが伝わりにくいのでダイジェスト版で。
10月初旬、フレッシュ仲間のmasaさんとSR600KR(紀伊山地Reverse・反時計回り)を走った。宿泊場所の相談があったときに「野宿でもよいですよ~♪」と返事をしたら、2泊3日の温泉+野宿プランが完成した。

マットはサドルバッグに入れることもできるが、かさばってバッグ内で物の移動がやりにくく、登坂もしにくいかと思い、トップチューブ下にマジックテープで固定した。

テントポールをしっかり固定できるようにするベルトループ。2ヶ所に2対溶接されている。そこに面ファスナーのベルトを通して折り畳んだマットを固定。グラグラしなくてかなりよい。問題があるとすれば、ボトルが片側からしか取れないことだ。メインのドリンクはハンドルに付けたフードポーチに入れ、ボトルケージは輪行袋と真水ボトルにしてあまり触らなくて済むようにした。
7:50 29km PC2 休暇村紀州加太 (写真省略)

最初60kmほどは平坦だが、車道を走れなかったり信号峠だったりで時間が掛かった。2週間前の恐山1000(過去記事)の脚の疲れが残っていた。ほぼmasaさんに引いてもらう。
高野山に向かって登って行く。自分に合った自転車は、立ち漕ぎのときにバイクを左右に振るリズムが自然に合うのがよい。

何度となく登り下りを繰り返しているうちに
14:15 132km PC5 熊野参詣道 小辺路 (写真省略)

初日のピークはここ。

この辺りで唯一のスーパーが閉店した跡地にできた龍神の24時間営業のコンビニ。しばらく補給場所が乏しいため、翌朝の朝食と約100km分の食料を確保。雨が強くなってきたのでレインウェアを上だけ着る。
19:00 217km PC7 近露王子跡 (写真省略)
20:00 237km 渡瀬(わたぜ)温泉・わたらせ温泉到着。
コインランドリーには間に合わなかったが、温泉に入ることはできた。ここで1泊。

2日目3:40リスタート。
4:00 240km PC8 熊野本宮大社 鳥居 (写真省略)

このコースの前半のボス、玉置山(たまきさん)までの長いアプローチ。話しながら登れば時間は掛かるが怖くない。ただすでに40分の遅れ。
13:20 351km PC10 熊野那智大社参道入口 (写真省略)
雨が断続的に降っていたが濡れた路面の下りでも全く不安がなく、ブレーキ掛けっぱなしでもあまり手が疲れない。ブラケットポジションでも十分ブレーキが利くので長い下りでも体幹に負担が掛からない。ディスクブレーキの恩恵を十分に享受できた区間。ブレーキの握りの遊びが段々と大きくなっていたので、ブレーキパッドの位置調整をする。
15:15 372km PC11 熊野速玉大社 (写真省略)

2泊目の温泉と買い物に間に合わないため、407.7km地点でおとくろ温泉に入ることにする。コンビニ併設がありがたい。往復で5kmほど外れる。
20:10 415km PC13 七色ダム (写真省略)

某屋根無しお宿。2000円。居心地が悪い上に、階段がめちゃ滑りやすいため断念。別の場所に移動。この日はほぼずっと雨で、マットを使おうとしたら折り畳んだ間に砂がたくさん入り込んでいた。洗い流したら背中が冷たくなりそうなので使わなかった。ちょっと誤算。

3日目の朝。晴れを期待させる虹。
8:15 504km PC14 コウヤマキの群落 (写真省略)
9:15 526km PC15 モンベル 五條店 (写真省略)
時間があったので、ここで手袋を買って店内で軽食を摂った。そのときにPC10からここまで175km以上、普通の薄いテムレスで走っていたことに気づいた。クッションがないにも関わらず、手が痛くなっていないことに驚いた。

意地で足付きなしで登る。また雨が降ってくる(怒) そしてこの後ラスボス、葛城山の中尾ルート。PC手前5~6kmで20%越えが連発して押し歩き(怒)(汗)(涙)

下りの落下している枝の多さが気になる。こんなに急だったっけ。とはいえ、やはり凸凹があまり気にならず、ディスクブレーキの安心感は強かった。

完走!
最後に
まだ2500kmしか乗っておらず、十分性能を引き出せていないと感じる。自転車の動きを自分で止めてしまっていると感じるときもあるので、今後乗り込んで行きたい。
次回はPikaCyclingさんの「街乗りMTBのススメ」です。


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